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コラム・オピニオン 2018年4月2日

最も深刻な人手不足に直面する島根、鳥取、福井県

取締役会長
山本 謙三

人手不足は大都市圏よりも地方圏が深刻

 総務省の労働力調査には、参考統計として「都道府県別結果(モデル推計)」がある。サンプルの制約によるデータの振れをモデルで均し、47都道府県を比べられるようにしたものだ。

 最新2017年10~12月のデータによれば、完全失業率は島根、鳥取、福井の3県が全国最低の1%台前半となった。これに岩手、和歌山の両県が続く(参考参照)。いずれも超人手不足状態にあるといってよい。

(参考)都道府県別完全失業率(モデル推計値)

(参考)都道府県別完全失業率(モデル推計値)

  (注) 全国平均はモデル推計の結果によるもの。毎月公表される全国データとは異なる。

 (出典)「労働力調査結果」(総務省統計局)の参考資料「都道府県別結果(モデル推計値)」を基に、NTTデータ経営研究所が作成。

 地方圏40道府県の完全失業率(平均)は、このところコンスタントに全国平均を下回る。人手不足は、大都市圏よりも地方圏の方がはるかに深刻だ。

 たとえば北陸は、もともと女性の有業率が高い地域である。2012年の調査(「就業構造基本調査」)では、福井県が全国1位だった。女性の労働参加がすでに進む地域で、完全失業率がここまで低下しているのは、人手不足がいかに深刻であるかを物語る。

地方が深刻な人手不足に直面する理由

 では、なぜ人手不足は地方圏で先行し、大都市圏よりも深刻なのか。

 労働供給面では、若年層、中堅層が高い所得を求めて大都市圏に転出する一方、高齢者の引退が進む。この結果、地域の労働供給力は急ピッチで縮小している。

 他方、労働需要面では、高齢化に伴い介護関連の需要が増大している。つまり、地域の労働需要は供給力の縮小ほどには減らない。この結果、需給のバランスが崩れ、人手不足に陥っているものだ。

外国人の労働力にどこまで期待できるか

 若年層や中堅層の県外転出を止めることは現実的でない。現に存在する大都市圏と地方圏の所得格差は、縮小に時間がかかる。万一、大都市圏と地方圏の生産力格差を今のままに、若者たちの地方圏への移住だけを促せば、日本経済全体の成長力が低下しかねない。

 他方、地域の潜在的な労働力には限界がある。そうであれば、どうしても期待は海外からの労働力、すなわち外国人の労働力に向かう。

 実際、リーマンショック後の2009年から2017年までの間、全国の就業者増加258万人に対し、外国人就業者(=「外国人労働者」)の増加は72万人に達した。異なる統計であることに留意が必要だが、就業者増加のおよそ4人に1人が外国人だった計算となる(注1)

(注1)データの制約を踏まえ、ここでは、国内就業者数は2017年7月の2009年7月対比(「労働力調査」)、外国人就業者数は2017年10月の2009年10月対比(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」)を用いている。

 ちなみに、この間の外国人就業者の増加を在留資格別にみると、留学(+18万人)、永住者(+15万人)、技能実習(+15万人、注2)、専門的・技術的分野(+14万人)となる。いわゆる高度人材(主に専門的・技術的分野)だけでなく、いかに多くの留学生、技能実習生が国内の労働市場を支えているかが分かる。

(注2)2009年以前は技能実習の制度が異なるため、ここでは2009当時の在留資格「特定活動」をすべて技能実習とみなして、2017年の「技能実習」との差分を計算している。

 問題は、人手不足の著しい島根、鳥取、福井、岩手などでは、留学や技能実習、専門的・技術的分野の受け入れが容易でないことだ。留学生を受け入れる学校が少ない。技能実習を受け入れる製造業の数にも限りがある。

 一方、介護分野は、2017年秋にようやく技能実習制度の導入が認められたところだ。技能実習生の本格流入はこれからだろう。山陰や北陸の地域で人手不足が加速した背景には、こうした事情もある。

永住者の移住を促す

 もちろん、それぞれの自治体も手をこまぬいてきたわけではない。自治体が労働力確保に向かったのは、永住資格や定住資格をもつ外国人である。

 たとえば島根県出雲市は、2016年に「多文化共生推進プラン」を掲げ、外国人住民を「良きパートナー、良き隣人として」受け入れることを宣言した。現在も、外国人に向けたコミュニケーション支援や生活支援、地域づくりなど、多くの活動を展開している。

外国人雇用への取り組みを見直すこと

 こうした自治体の取り組みは、他の自治体にとってよい参考事例になるだろう。

 ただし、全国すべての自治体が同様の取り組みを進めれば、単に永住者の奪い合いともなりかねない。また、日本人と同様、外国人(永住者)も高い所得を求めて国内を移動するケースが少なくない。長期的に外国人労働力を確保することは、やはり多大な努力を要する。

 そこで問題となるのは、外国人雇用をめぐる現在の制度だ。

 たとえば、技能実習制度は、在留期間に最長3年、5年といった制限がある。したがって、技能を身につけた時点で母国へ帰らなければならない。これは、制度が「途上国への技術移転」を目的としているからだが、国内労働市場の期待とは大きなギャップがある。

 また、技能実習制度は、制度の目的上、単純労働を対象外としている。しかし、地方では、対象外の職種にも顕著な人手不足が生じている。たとえば、地方では、郊外の独居世帯(高齢者)の生活を支える宅配サービスやコミュニティバスの運転員の人手不足が目立つ。

 この間、技能実習生をめぐっては、受け入れ側の不適切な処遇のニュースもなかなかあとを絶たない。

 要するに、外国人雇用に対する建て前と実態がかけ離れてしまったということだ。現に進む地方圏の人手不足と外国人への依存度の高まりを、もっと直視する必要がある。地方自治体や地域住民の努力に委ねているだけでは解決できない。

 人口動態を踏まえれば、外国人との共生を目指さないかぎり、日本の労働市場は息詰まる。外国人雇用の制度を見直し、建前と実態のかい離を縮小させることが重要だ。残された時間は少ない。

以上