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コラム・オピニオン 2015年02月06日

なぜ人口流出超の大都市が増えているのか~~北九州、静岡、浜松にみる流出超都市の果敢な取組み

取締役会長
山本 謙三



7つの地方大都市が流出超に

 1年前、東京23区および政令指定20都市のなかで、札幌市、福岡市への人口流入が顕著であることを書いた(2014年2月「札幌、福岡はなぜ人口流入超トップ3なのか」 参照)。先般、2014年中のデータが公表されたので、最近の動きを改めて確認しておきたい(参考1)。

 2014年までの4年間合計で人口転入超の多い大都市は、引き続き東京23区、札幌市、福岡市の順となった。2014年だけでみれば、東京23区、札幌市、福岡市、大阪市、川崎市の順である。前年とは大阪市と福岡市が入れ替わったが、顔ぶれに大きな変化はない。

 2014年中の最大の特徴は、人口転出超に転じた地方大都市が増えたことである。前年までの北九州市、静岡市、浜松市、堺市に加え、神戸市、新潟市、熊本市が転出超に転じ、計7都市となった。転出超の大都市は2012年以来年々増えており、「3大都市圏だけでなく、地方大都市にも人口が流入する」という近年の図式に変化が窺われ始めている。

(参考1)21大都市の人口転出入超過数推移

出典:「住民基本台帳人口移動報告」(総務省統計局)を基にNTTデータ経営研究所が作成。

団塊世代の退職が一巡し、地元回帰が減り始めた

 地方大都市の人口転出入には、これまでいくつかの特徴があった(参考2)。

 第1に、幼児期(0~9歳)の人口は、3大都市圏と同様、地方大都市の一部も転出する傾向がみられる。緑や遊び場の多い郊外で子供を成育したいとの子育て世代の意向を反映している。

 第2に、10代、20代の人口は、多くの場合、進学や就職を機に県内他地域から大都市に大量に転入する傾向がある。

 第3に、50代以降は、3大都市圏に就職した地方出身者の一部が地元に帰り始める。ただし、出身地そのものでなく、出身地に近く住環境に恵まれた地方大都市に住居を構える例が少なくない。これが地方大都市への転入超を加速させてきた(Jターン)。

 しかし、3大都市圏から地方大都市への回帰は、団塊世代の退職一巡に伴いピークアウトしてきた。この結果、一部の地方大都市では50代以降の転入者数が減少し、全体として転出超に転じている。逆に、3大都市圏の転入超数は、これと対をなすかたちで増加傾向を辿り始めている。

(参考2) 21大都市の年齢別人口転出入超過数(2011~14年計)

出典:「住民基本台帳人口移動報告」(総務省統計局)を基にNTTデータ経営研究所が作成。

北九州、静岡、浜松にみる新産業の創出

 こうした転出超の地方大都市の典型例は、北九州市、静岡市、浜松市だろう。転出超数が相対的に多く、かつ増加している。

 これら3都市には共通する要因がある。第1に、いずれも製造業が盛んな都市であり、製造業の海外移転を反映して雇用吸収力が低下した。第2に、近隣にさらに大きな都市があるため、進学・就職年代がむしろ転出超となっている。北九州市にとっての福岡市、静岡市にとっての東京圏、浜松市にとっての名古屋市がこれに当たる。

 しかし、これら3都市はこれまで手をこまぬいてきたわけではない。いずれも長年にわたり新しい産業の育成に尽力してきた。この結果成果が着実に挙がり、都市としての魅力はむしろ増しているようにみえる。

 たとえば、北九州市は「世界の環境首都」を謳い、スマートコミュニティづくりに果敢に取り組んでいる。再生可能エネルギーの導入等によるCO2削減への取組みは速い。また、リサイクルなどの環境関連ビジネスが拡大し、アジア域内との技術支援・交流も活発に行われている。

 静岡市、浜松市も、県内他市町村と有機的に結びつき、リーディング産業育成の主翼を担っている。静岡県下では、「ファルマバレー(医療・健康関連)」、「フーズサイエンスヒルズ(食品関連)」、「フォトンバレー(光・電子関連)」といった構想が推進され、相互の連関も強い。金融面からも、県内の貸出金残高が大幅な伸びを示すなど(2003~14 年+32%、同全国平均+11%)、支援は手厚い。

 これら3都市の新産業は、もともと比較優位をもつ技術や産業を基盤としていることに特徴がある。北九州市の場合、公害克服への長い取り組みが環境関連産業を生み出してきた。静岡市、浜松市も、自動車・二輪車、医薬品、光技術、農業など、競争力の高い技術や産業の上に新産業が成り立っている。

 また、新産業の核心が、設計、開発、デザインなどの分野にあることも特徴である。製造業等のなかの、いわゆる「サービス部門」(設計等)の拡大を図ることで、新興国との競合が避けられ、より高い付加価値の創出が期待される(2014年10月「グローバル・バリュー・チェーン下の競争力はどこから生まれるか」 参照)

 地方における新産業の創出は、こうした地域の比較優位に立脚し、他地域・他国との間で補完関係を生み出すものでなければならない。人口の流れを一変させることは難しいが、そうした新産業の創出は地域の所得向上に貢献し、都市を魅力あるものとしていくことになるはずである。

以 上

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