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コラム・オピニオン 2014年11月04日

人口動態に揺れる持ち家動向~~「高齢層はピーク更新、現役層はボトム更新」の謎

取締役会長
山本 謙三



持ち家世帯率は上昇、ただし現役層はボトム更新中。

 5年ごとに実施される総務省「住宅・土地統計調査」(2013年調査)が7月に公表された。話題は空き家の増加に集中したが、持ち家世帯率(注)の推移も興味深い。

(注) 持ち家に居住する主世帯の普通世帯全体に占める割合。

 わが国全体の持ち家世帯率は、1993年を最近時のボトムとして上昇に転じ、足許では過去40年間のピークに近い水準まで回復した(1983年62.0%<既往ピーク>→93年59.6%→2013年61.6%)。

 しかし、家計を主に支える者の年齢別にみると、持ち家世帯率が明確に上昇したのは65歳以上の高齢層だけだ。逆に、30歳以上64歳以下では、ほぼすべての層(5歳区分)でボトムの更新が続いている(参考参照)。つまり、持ち家世帯率の回復は、もっぱら高齢世帯の増加と高齢層の持ち家世帯率上昇によるものと言える。


(参考)年齢階層別持ち家世帯率推移

(%)(参考)年齢階層別持ち家世帯率推移
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(出典)総務省「住宅・土地統計調査」を基にNTTデータ経営研究所が作成


長寿化や晩婚化・未婚化が持ち家世帯率に大きく影響

 以下、その理由を推測してみよう。

 第1に、高齢層(65歳以上)の持ち家世帯率上昇は、とくに長寿化の影響が大きい。わが国における65歳時点の平均余命は、1970年代前半から2013年にかけて男で約5年、女で約7年伸長した。

 一方、わが国では、いったん持ち家をもつと、その後住み替えてもやはり持ち家に入居する例が多い。その背景には、「高齢になると、賃貸物件が借りにくくなるのではないか」といった不安や「終の棲家で最期を迎えたい」といった希望があると言われる。このため、長寿化すればするほど、高齢層に持ち家が累積していく結果となる。

 第2に、30歳代を中心とする若い世代の持ち家世帯率の低下には、晩婚化、未婚化が大きく影響している。

 若い世代は、一般に、独身の間は親と同居するか賃貸住宅に居住し、結婚や出産を機に持ち家購入に踏み切る例が多い。一方、わが国における結婚年齢をみると、男女の平均初婚年齢は40年前に比べ4歳前後繰り上がった。また、30歳代前半の未婚率は、1975年の1割前後から2010年には4割前後まで上昇している。

 こうした晩婚化、未婚化の流れが、若い世代の持ち家世帯率を押し下げている。前掲参考を俯瞰すると、1970年代後半に比べ、若い世代の持ち家世帯率は、全体として5歳程度後ずれしたイメージにある。


持ち家世帯率低下が特徴的な40歳代、50歳代

 第3に、上述の「5歳後ずれパターン」以上に持ち家世帯率が低下しているのは、実は、40歳代、50歳代の中堅・壮年層だ。「最近の若者は車も家も持たなくなった」と言われるが、家に関しては、中堅・壮年層も自家を持たなくなってきているのが特徴だ。

 その理由の特定は難しいが、一つには、バブル崩壊後不動産価格の下落が続いたため、この世代には持ち家の購入を先延ばしするインセンティブが働いてきたことが挙げられよう。

 また、この世代は、団塊世代と同様に、進学時、就職時に地元を離れ、都市部で勤務を続けている者が多い。そうした者のなかには、いずれ退職時点で地元に戻ることを想定し、それまでの間勤務地では賃貸居住を続けるケースが少なくない。

 このほか、晩婚化、未婚化の影響や自家所有に関する価値観の変化もあろう。これらの要因が重なりあって、40歳代、50歳代の持ち家世帯率は低下が続いてきたものと推測される。

持ち家世帯率は上がるか下がるか

 では、今後、わが国全体の持ち家世帯率は上がるのだろうか、下がるのだろうか。

 比較的はっきりしているのは、長寿化の進展は、持ち家世帯率を引き続き押し上げる方向で寄与することだ。たとえば「75歳以上」といった、より高齢の層だけに着目すれば、持ち家世帯率は確実に上昇していこう。一方、晩婚化、未婚化の進展は、逆に持ち家世帯率を押し下げる方向で寄与し続けることになろう。都市部の住宅事情を踏まえても、現役世代の持ち家世帯率の急回復は見込みにくい。

 問題は、これらの要因以外はどうか――とくに現役世代が高齢層に移行する時点でどう行動するか――である。これには、以下の二つの可能性が考えられる。

 第1は、これまで持ち家世帯率の低下が目立った現役世代も、年齢を重ね、高齢層の仲間入りするにつれて、持ち家の購入を急ぐ可能性である。

 たとえば、団塊世代をみると、退職後地元に戻った者は、その時点で持ち家購入に踏み切るケースが少なくない。実家を相続するケースもある。この場合には、わが国全体の持ち家世帯率は高止まりないし上昇を続けることになる。

 第2は、逆に、現役世代の持ち家購入が年々後ずれを続け、たとえば「65~69歳」「70~74歳」といった年齢層も巻き込みながら、超高齢層を除くほとんどの年齢層で持ち家世帯率が低下する可能性である。

 賃貸居住の継続は、持ち家の場合に比べ、居住地を柔軟に選択できるメリットがある。また、「高齢者は賃貸を借りにくいのではないか」といった不安も、賃貸居住を続ける者が増えれば、おのずから社会環境自体が変わり、軽減される可能性が考えられる。こうした動きが強まれば、わが国全体の持ち家世帯率は低下に向かうことになる。

 現時点で、上記のいずれの可能性が将来のトレンドを形成していくことになるかを予測することは難しい。

 ただ、人口動態の変化が、金融機関をはじめとする様々なビジネスに大きなインパクトを与え続けることだけは間違いない。たとえば、高齢になってからの住宅購入は、手持ち資金のウェイトが高い(借入依存度が低い)。したがって、金融機関にとってみれば、現役世帯の持ち家世帯率低下は、住宅ローンを減少させ、その一方で賃貸用アパート・マンション建設用融資のウェイトを高めることになる。

 やはり、人口動態の変化がもたらすインパクトからは目が離せない。

 以 上