"電子契約"とは、コンピュータ・ネットワーク上で、個人や企業が商品またはサービスの売買契約を取り交わすことである。
この定義によれば、インターネット・ショッピングも一種の電子契約を利用することで成り立っている。従って、インターネット・ショッピングを利用した人は電子契約を行ったことになり、個人レベルで電子契約の利用経験がある人は決して少なくないだろう。それでは、企業レベルではどうであろうか。
最近では、電子契約を企業間の取引に積極的に活用しようとする気運が高まりつつある。とくに建築業界では、大手のゼネコンを中心に、電子契約を積極的に活用する新たな動きが見られる。たとえば、大手ゼネコン5社とNTTデータが中心となって出資、設立した「コンストラクション・イーシー・ドットコム(CEC.COM)」という会社がある。この会社は建築資材の電子商取引市場を提供すると同時に、建築業界向けに電子契約サービスを提供している。このサービスを利用することで、インターネットが使える環境さえあれば、電子契約に必要な要件を満たすシステム環境を手軽に利用して電子契約を行うことができるのである。
では、電子契約を利用すると、どのようなメリットがあるのだろうか。実は、電子契約の場合には、通常の紙面による契約で必要となる印紙税が課税されないことになっている。2001年4月に「IT書面一括法」が施行され、ネット上で取り交わされる電子データや電子文書による契約は、紙面では印紙税の課税対象となる内容であっても、印紙税の課税対象外との解釈が成り立っており、国税庁も同様の見解を示している(参考:エヌピー通信社「納税通信2001.4.16号」)。これによって、企業間の取引時に発生していた契約書や注文請書に対する印紙税が、電子契約を利用することで非課税となる。従って、一契約あたりの取引金額が大きい業種では、契約書に貼る印紙税も高額となるため、電子契約の利用促進により印紙税の大幅削減が可能になる。
しかし、電子契約を印紙税削減のために利用するだけでは、電子契約のもつ本来のメリットが発揮されないことはいうまでもない。大切なのは、契約業務の電子化を手始めとして、商取引に関する業務にITを活用することで、業務全体の効率化をめざすことである。ITの活用によって業務プロセスの効率化が上手く進めば、印紙税の削減以上の有形効果がもたらされることは間違いない。
今後、電子契約をきっかけとして、企業間商取引の電子化が進めば、企業単体のみならず産業全体の生産性向上へとつながることが期待される。業界大手企業の電子契約への取り組みいかんが、その成否の鍵を握っているといえよう。
(NTTデータ経営研究所 コンサルタント 田所 聖司) |