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上限金利引下げ・総量規制導入などが実施される改正貸金業法四条施行まで、いよいよ約一年以内という段階になった。改正が事業性資金、とくに、中小企業や個人事業主の資金繰りに与える影響について、当社が日本貸金業協会からの委託に基づき実施した「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」結果をもとに検証した。
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小規模事業者ほど貸金業者依存度が高い
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図表1:事業資金の借入先
拡大
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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図表2:貸金業者の利用理由
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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図表3:業態ごとの担保・保証人の有無
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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今回のアンケート調査によれば、企業や個人事業主の業態ごとの借入先比率は、「銀行」が五四%で最も多く、次いで、「信用金庫・信用組合」が三四%、「日本政策金融公庫」が三一%という順になった。商工ローンを含む「貸金業者」は一三%を占めたが、資本金二〇〇〇万円未満の中小企業(個人事業主含む)では一六%、個人事業主では二三%となるなど、事業規模が小さくなるほど、「貸金業者」からの借入比率が高くなる傾向にあることがわかった(図表1)。
貸金業者を利用している企業経営者・個人事業主に対して、なぜ貸金業者を利用しているのか、その理由を尋ねたところ、「無担保で借入れができたから」が六〇%で最も高く、次いで、「手続が簡単だから」(五六%)、「保証人を立てる必要がなかったから」(五四%)が続いた(図表2)。
業態ごとに担保・保証人の有無を確認してみても、銀行から「無担保・無保証(代表者の個人保証は除く)」で借り入れている比率は四三%にとどまった一方、貸金業者からの借入れは「無担保・無保証」が七四%と圧倒的な比率を占めた(図表3)。
中小企業や個人事業主ほど貸金業者からの借入比率が高くなる傾向にあることと考え合わせると、担保も保証人もなく、銀行で借りたくても借りられない小規模事業者は、金利と引き換えに貸金業者から借入れを行うことで、日々の資金繰りを回していることが想像される結果となった。
厳格化する銀行の融資姿勢
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図表4:業態ごとの直近1年間の融資姿勢
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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銀行、信用金庫・信用組合の直近一年間の融資姿勢が「大変厳しくなった・厳しくなった」と回答した比率は四五〜四六%となり、「非常に緩和した・緩和した」の六〜八%を大きく上回った(図表4)。貸金業者の融資姿勢は、いまのところ、「あまり変わらない」が約半数(四七%)を占めているが、今後、改正貸金業法四条施行により上限金利が引き下げられることに伴い、多くの貸金業者が審査基準を厳しくすることが予想されるため、とくに、中小企業や個人事業主をとりまく資金調達環境のさらなる悪化が懸念される結果となった。
事業資金への転用比率は約四割
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図表5:事業資金への転用比率
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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図表6:事業の資金繰りへの影響
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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調査では、企業の経営者や個人事業主に対して、自身の生活資金名目等での借入れを事業資金として転用したことがあるかどうかをあわせて確認したが、「現在転用している」と答えた比率は二二%となり、「過去に転用したことがある」経験者も含めると、約四割が「個人としての借入れを事業に転用したことがある」と回答した(図表5)。
また、現在の借入先を含め、個人として、生活資金名目等での借入れが今後いっさいできなくなったと仮定した場合の、事業の資金繰りへの影響を聞いたところ、五八%が「影響あり(支障がある)」と答えており、中小企業経営者や個人事業主の多くは、個人の資金繰りと事業の資金繰りを同一に考えていることがうかがえる結果となった(図表6)。
経営者等の過半数が総量規制に抵触
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図表7:総量規制抵触者の職種別割合
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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今回の法改正では、四条施行により「総量規制」が適用され、個人としての借入れは、原則、年収の三分の一以内に制限されることになる。企業経営者であっても、個人事業主であっても、実質的に事業資金に転用されるかどうかを問わず、個人として生活資金名目等で借入れを行う限り、四条施行以降は、原則、自身の年収の三分の一を超えた借入れができなくなる。
今回の調査では、現在の消費者金融利用者の四四%が年収の三分の一を超えた借入れを抱えている(総量規制に抵触している)ことが確認できたが、「企業経営者、役員、個人事業主」に限定した場合、この比率(総量規制に抵触する比率)が五三%になることもあわせて確認できた(図表7)。
四条施行以降、総量規制抵触者は、借入枠内での反復利用も含め、追加での借入れができなくなる可能性があるため、前述の個人としての借入れが事業の資金繰りに与える影響をふまえると、ますます中小企業や個人事業主の今後の資金繰りが懸念される結果となった。
貸金業法改正の認知率は利用者の四〇%
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図表8:貸金業法改正の認知状況
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」
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図表9:
貸金業法改正項目別の認知状況
出所:「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」 |
社会的にも相応のインパクトが予想される今回の業法改正であるが、一般的に、貸金業法改正の認知率は低く、今回の調査でも、「内容も含めてよく知っている」「ある程度は知っている」は合わせて二一%にとどまり、「内容を理解していない」「改正を知らない」「貸金業法そのものを知らない」という回答が約八割を占める結果になった(図表8)。現在借入残高のある回答者に限定しても、「内容を含めてよく知っている」「ある程度は知っている」は合わせて四〇%にとどまった。
また、「内容も含めてよく知っている」「ある程度は知っている」と回答した回答者に、具体的に業法改正の何を知っているのか確認したところ、八五%の回答者が「上限金利が利息制限法の金利に引き下げられる」を選択した一方、その他の項目(総量規制、収入証明の提出、信用情報機関への登録等)は、一二〜三八%にとどまる結果になった(図表9)。
かりに、このまま認知率が上がらないと仮定した場合、貸金業者が総量規制対応を開始した時点で、規制抵触者に融資停止措置等が施されるため、たとえば、企業経営者や個人事業主であれば、従来どおり、個人で借入れを行い事業資金に転用しようと考えていた矢先、ある日突然、個人での借入れが制限され、事業の資金繰りが立たなくなる中小企業や個人事業主が急増、社会的な混乱が生じる事態も懸念される。
業法改正をソフトランディングさせるためにも、四条施行を控えた貸金業者各社が、与信厳格化に向けて本格的な措置を講じる前に、改正内容を利用者に広く浸透させる措置を講じる必要があると考えられる。
悪化する中小企業個人事業主の資金繰り
アメリカの金融危機に端を発した世界的な不況が日本に押し寄せ、中小企業や個人事業主は、現在、深刻な経済的ダメージを受けている。「中小企業景況調査(〇九年一〜三月期)」(経済産業省)による中小企業の業況は急速に悪化する傾向にあり、景気「好転」から景気「悪化」を減じた「業況判断DI」はマイナス五〇ポイントと、九四年以降で最悪の値となった。また、資金借入れ「容易」から資金借入れ「困難」を減じた「借入難易度DI」もマイナス一九ポイントとマイナス幅が拡大しており、中小企業の資金調達環境は、今後も、厳しい局面が予想される。
東京商工リサーチによる、「銀行一二一行〇八年九月中間期単独決算ベース中小企業等貸出金残高調査」によると、銀行一二一行中六九行が中小企業等に対する貸出残高を減少させており、そのうち、減少額一〇〇億円以上の銀行が四七行となっている。
〇八年九月は、リーマン・ブラザーズの経営破綻による、国際的な金融経済市場の混乱が始まった時期であり、銀行がより慎重な姿勢をとったことも推測されるが、世界的な不況のあおりを受けた日本国内の景気動向が、すぐに好転するとは考えにくい。加えて、担保も保証人もない中小企業・個人事業主にとっては、改正貸金業法四条施行により、ますます厳しい経営環境が予想される。
前述の業法改正の認知の促進、セーフティネットのさらなる整備等、小規模事業者の資金繰りの安定化に向けた追加的な措置が待たれる状況である。
(文中意見に関するものは、筆者の個人的な見解であって、日本貸金業協会のものではない)
さとうてつし
93年神戸大学卒、さくら銀行(現三井住友銀行)入行。リテール金融ビジネス戦略等に従事。05年アビームコンサルティング入社、07年NTTデータ経営研究所入社。おもに、リテール分野におけるマーケティング戦略策定、業務プロセス設計、各種調査・リサーチ業務等のコンサルティングに従事。
こいでとしゆき
99年山形大学大学院工学研究科修了、NTTデータ入社。情報セキュリティ、大規模クレジットカードシステム開発などに従事。07年NTTデータ経営研究所入社。おもに、クレジットカード分野、電子マネー分野におけるマーケティング戦略策定、新規サービス開発、各種調査・リサーチ業務等のコンサルティングに従事。