現在多くの民間金融機関では、昨今の超低金利を追い風に変動金利型の低金利住宅ローン商品の販売に、精力的に取り組んでいる。現状の住宅ローン商品には、変動・固定といった金利や返済期間についてのバリエーションはあるものの、基本的には、ローンの貸出時に債務者の収入を見て貸出の可否を判断する収入基準による商品しか提供されていない。
しかし、この手法の前提にあるのは終身雇用、年功序列賃金といった日本型雇用慣行であり、既にこの慣行は崩れつつあるのが実態である。このため、金融機関の立場から見れば、従来の収入基準を維持しようとすると適格債務者の減少による収益機会の減少を招き、基準を緩和すれば信用リスクの増大を招いてしまう。一方で住宅取得者の立場から見れば、収入基準に合致しない者の住宅資金調達の道が閉ざされることになる。
また担保査定において、担保物件の価値は取得価格を基準に査定されることが多く、必ずしも実際の換価価値とは一致していない。かつては地価が傾向的に上昇していたため、建物の換価価値が見込めなくても担保不足に陥るケースは少なく、このような担保査定であっても問題はなかった。しかし、昨今の軟調な地価を鑑みるに担保割れの可能性も高く、土地担保による信用補完の機能が低下していることは否めない。
このように、現状の住宅ローンには多くの問題点があり、今後の社会環境の変化に対応できるような新しい住宅ローンの出現が望まれるところである。これについて、当社では、昨年度から刈屋武昭座長(明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授)、野城智也分化会長(東京大学生産技術研究所教授)のご指導の下、住宅業界、及び住宅金融業界の有識者の方々を委員とする研究会を立ち上げ、新しい住宅ローンの実現に向けた検討を進めている。
昨年度までの検討では、新しい住宅ローンのコンセプトとして、担保物件の換価価値を厳密に把握する新たな担保概念を導入し、返済を債務者の将来のキャッシュフローに依存するのではなく、担保物件の換価価値に依存する仕組みとすることを検討した。これにより、住宅ローンをノンリコース(Non-Recourse=非遡及型融資)化し、人材の流動化に対応した仕組みを実現したいと考えている。
また、維持管理状況など住宅の品質をローンの条件とリンクさせ、優良な維持管理が施されれば、住宅の減価の程度は減殺される仕組みも提案した。通常の維持管理を前提にLTV(Lawn To Value=担保の資産価値に対する負債比率)が一定になるようにローンの約定弁済を設計すれば、優良な維持管理によってLTVは低下し、リスクプレミアムは圧縮され、それに見合うだけ金利を低く設定できる可能性がある。
結果として、住宅の維持管理にコストをかけて良い住宅を長く使うインセンティブが生まれ、住宅品質の向上も期待できると考えている。
こうした新しい住宅ローンの実現のために、まずは中古住宅市場の活性化に向けた、住宅品質情報の整備が急務となっており、どのような情報をどのような方法で蓄積していくべきかについて検討を進めてきた。
具体的には、政府の進める住宅性能表示制度で作成される情報をベースとして、住宅の耐用年数に大きく影響を与える要素に重点を置き、いくつかの項目を補強すると共に、住宅の施工後の維持管理状況についても継続的に情報を蓄積する仕組みを検討している。
今年度は、こうした住宅品質情報の蓄積の仕組みをどのように実現していくべきかを中心に、検討を進めているところである。
昨年度までの検討内容について、まだまだ不十分な点も多いが、中間報告書としてまとめており、以下に掲載している。住宅業界、金融業界の方々などにご覧いただき、ご意見をいただければと思っている。
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