| 4.中国シニアビジネスの可能性 |
 |
現時点における中国の60歳以上人口1.32億人(2000年)は、すでに日本の総人口に匹敵する数字である。そして、60歳以上人口による総収入額は、約3,000億元(約4兆5,000億円)に達している。これから急激に高齢化が進展することを勘案すれば、中国の潜在的なシニアビジネス市場はとてつもなく巨大である。
前述のように、中国国内の経済的な地域格差は大きい。内陸部の農村地域のように、生活している高齢者の収入が少なく、未だ社会・制度などの基盤整備に対する社会的支援へのニーズが強い地域では、短期的に大きなシニアビジネスには繋がりにくいが、沿岸部の都市を中心とする経済発展地域では、数年前からの高齢者保健食品、高齢者健康機器、高齢者用服装、高齢者医療サービス等、そして近年の介護サービス、高齢者住宅等、シニアビジネス市場が徐々に形成され、拡大しつつある。
特に、上海、北京、大連などの大都市では、高齢者住宅と養老施設(老人ホーム)のニーズが拡大しており、新たなビジネスとして注目されている。豊かになりつつある中国人は居住環境の改善を求め、高齢者も自分の生活スタイルにマッチするような居住環境を希望していること、家庭観の変化により大家族生活のスタイルが変わり、高齢者自身がQOL(生活の質)の向上を考え、若い世帯との共同生活を望まなくなってきたことがその要因である。
上海市では、高齢者の1.9%、約4.8万人が高齢者住宅を希望しているのに対し、商業ベースで高齢者住宅の開発を行っている会社は1社しかなく、ほとんどニーズに応え切れていない状態が続いている。北京市では、40万人以上の高齢者が老人ホームへの入居を希望しており、武漢市でも、84.6%の高齢者が子供の世話にならない独立生活を望んでいる。 |
|
 |
【表】高齢者が希望する老後生活方式(上海市)
|
|
| 老後生活方式 |
在宅 |
高齢者住宅 |
養老施設
(老人ホーム) |
| 割合 |
95.8% |
1.9% |
2.3% |
|
|
| (出典:「上海市高齢者住宅市場調査」(上海市不動産経済協会)を基にNTTデータ経営研究所が作成) |
|
 |
第15次老齢事業発展5ヵ年計画は、都市部における老人ホームベッド数を高齢者1,000人あたり10床整備することを目標にしており、都市部では富裕層向けの老人ホーム建設が地方政府等を中心に進められつつあるが、全く追いつかない状況である。高齢者住宅あるいは老人ホームビジネスは、現在、中国で顕在化している最大のシニアビジネスと位置付けることができるだろう。
加えて、中国の世界貿易機関(WTO)への加盟により、これまで日本企業をはじめとする外資系企業が市場参入できなかった中国国内の「サービス分野」への進出が可能になる。これまで各国の対中投資は、製造業への投資が中心であったが、「サービス市場」の全面開放で、これまで限定的でしかなかった中国国内のサービス市場への投資が拡大されることになる。
中国への外資系企業の進出形態には、主に独資(100%外国資本)と合弁(外国企業と中国企業の共同出資)があるが、高齢者向け生活・福祉事業は、そのマーケットを中国国内に求めるので、中国国内の組織あるいは企業等との合弁方式で参入することが必要である。これまでの外資系企業の中国進出の失敗例を見ると、合弁パートナーである中国企業との軋轢が最大の原因となっており、パートナーの選択は極めて重要なポイントとなる。
いずれにせよ、日本企業は、他の外資系企業に比べて、地理的にも文化的にも有利であることに加えて、世界の最先端を行く高齢化先進国として、シニアビジネスに関して他国にないノウハウを蓄積することが可能である。独自のノウハウに基づき、高齢者の潜在的な欲求(ウォンツ)を現実化させる、付加価値の高いサービスを中国で展開すれば、潜在的な中国シニアビジネス市場を一気に顕在化させることが可能だ。
後は、日本企業が、中国市場への適応化戦略を間違えることさえしなければ、中国シニアビジネス成功の可能性は高いと言えるだろう。 |
| |
以上 |
|