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デジタルストラテジーコンサルティング プロジェクト事例紹介

株式会社LIFULL様
不動産業界の課題解決に向けてデジタルテクノロジー活用を目指す
~ブロックチェーンを活用した業界横断型のプラットフォーム構築に向けて~

株式会社LIFULL
加藤 哲哉様
松坂 維大様
秀野 亮様

株式会社NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパン
ガバ パンカジ氏
セウェカリ シタル氏

株式会社NTTデータ経営研究所
ビジネストランスフォーメションユニット
シニアコンサルタント 桜井 駿

不動産業界が抱える課題に対して、これまでの延長線上に無い、デジタルトレンドを踏まえた解決に取り組むLIFULLの加藤氏、松坂氏、秀野氏と、合同チームとしてプロジェクトを共に推進したNTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパンのパンカジ氏、シタル氏に、本プロジェクトを統括したNTTデータ経営研究所の桜井がインタビューを行いました。

お客様

 加藤 哲哉 様

加藤 哲哉 様
  • 株式会社LIFULL
  • 執行役員 LIFULL HOME’S事業本部事業支援部 部長

大学卒業後、株式会社リクルートに入社後、WEB賃貸領域の立ち上げを行う。
2000年同社を退社後、株式会社レンターズを設立、代表取締役就任。(2017年に同社を株式会社LIFULLに合併。)

松坂 維大 様

松坂 維大 様
  • 株式会社LIFULL
  • LIFULL HOME’S事業本部
  • 事業支援部 不動産情報バンク推進グループ グループ長

1999年株式会社LIFULL(旧ネクスト)入社以降、「LIFULL HOME‘S」の営業・企画・マーケティング等に携わり、その後、新規事業・子会社の立ち上げおよび経営にも参画。
現在は「ブロックチェーン×不動産」をテーマに分散台帳技術による情報共有やトークン化に関するプロジェクトを推進中。

秀野 亮 様

秀野 亮 様
  • 株式会社LIFULL
  • LIFULL HOME'S事業本部 技術開発部 基盤開発ユニット プラットフォームグループ システムエンジニア

大学卒業後、中堅SIerでEC関連の開発業務に従事。
2006年に株式会社LIFULL(旧ネクスト)に入社。
主に不動産賃貸領域でのサービス開発に携わり、iPhoneアプリや物件検索エンジンの開発、インフラのクラウド移行などを担当。
入社時の目的でもある不動産のモビリティを向上させるため現プロジェクトに参画。

プロジェクトパートナー

ガバ パンカジ 氏

ガバ パンカジ 氏
  • 株式会社NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパン
  • Business Consulting事業部 事業部長

インド系大手IT企業を経て2009年より現職。
グローバル・デリバリー・モデルを駆使して、日本のお客様向けにグローバル展開、オフショア開発を提供する日本側の開発統括。
新たにデジタル・ビジネスを立ち上げ、現在は経営にも参画。

セウェカリ シタル 氏

セウェカリ シタル 氏
  • 株式会社NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパン
  • Business Consulting事業部 フィンテック&技術戦略推進部 ディレクター

外資系銀行・大手投資Fund会社を経て2009年より現職(当時Vertex Software)に至る。
主に金融系のプロジェクトを担当しながらお客様のデジタル・トランスフォーメーションを支援。
特にBlockchainやAIなど破壊的と呼ばれている技術トレンドをいち早く把握し、お客様の業務改革に役立つようにEnd-to-Endで対応。

プロジェクトリーダー

桜井 駿

桜井 駿
  • 株式会社NTTデータ経営研究所
  • ビジネストランスフォーメションユニット シニアコンサルタント

大手証券会社を経て2015年より現職。「顧客開発に悩む企業の問題を解決する」をミッションに、デジタル×デザイン×戦略を軸とした戦略コンサルティングに従事。
主な著書に、「超図解ブロックチェーン入門」(日本能率協会マネジメントセンター)、「決定版FinTech」(共著、東洋経済新報社)。
一般社団法人Fintech協会 事務局長、不動産・建設分野のスタートアップコミュニティ「PropTech Meetup」のオーガナイザーを兼務。

(所属・役職はインタビュー当時のものです)

【プロジェクトの背景】

デジタルビジネスによって変化が求められる不動産業界

本日はよろしくお願い致します。まずはじめに、LIFULLという会社について紹介をお願いします。

不動産・住宅情報の総合サイト「LIFULL HOME'S」の運営をメインに、常に革新することを理念に掲げて事業運営を行っています。現在は、事業の多角化・海外展開も積極的に取り組んでおり、「あらゆる人々の人生、暮らし(LIFE)を、安心と喜びで満たしていく(FULL)」という想いを込めて、2017年4月1日には社名を「LIFULL」に変更しました。
フルリノベーションを施してオフィス機能も刷新し、新本社オフィスは、オープンイノベーションが起こりやすい環境を目指し、「ENGAWA(縁側)」をキーコンセプトにしています。 社内と社外が有機的に交じり合える場として、1階には飲食スペース「LIFULL Table」、2階にはコワーキングスペース「LIFULL HUB」、8階にはイベントスペース、そして、ルーフトップには養蜂園があります。

ありがとうございます。メインビジネスを起点にして、様々な事業展開を行う御社が、ブロックチェーンというテクノロジーへの取り組みを始めたきっかけについて教えてください。

昨今、UberやAirbnbなど、CtoCのプラットフォームサービスが広がる中、不動産分野の取引や不動産賃貸への波及も時間の問題だと考えています。ブロックチェーンは、AI、VR、IoTと並び、社会に大きなインパクトをもたらす技術であり、これからの不動産業界をどのように変えていくことができるかについて、検討を行ってきました。

御社のイベントスペースでは、連日スタートアップ系のイベントが開催されており、中でも界隈からは「ブロックチェーンの聖地」と呼ばれたりもしていますね。

そうですね。コワーキングスペースやイベントスペースには社内だけでなく社外の人たちも誘致し、積極的に自分たちのテーマをぶつけながらイベントや、勉強会を行っています。桜井さんとの出会いも、桜井さんが講師としていらっしゃったブロックチェーンの勉強会イベントでしたね。国内外から様々な方々にご利用いただいており、お陰様で貴重なコラボレーションの場となっています。

不動産業界が抱える「情報」の課題

ありがとうございます。改めて、不動産業界が抱えている課題について教えていただけますか。

業界の課題は多岐にわたりますが、不動産取引に関連する情報の取り扱いは大きな課題の一つです。
不動産に関する情報は、土地と建物の大きく二つに分類することができます。土地は土地登記にブロックチェーンを活用するといった取り組みがすでに世界各地で実施されています。
今回スコープを当てたのが建物・物件に関する情報です。築年数や部屋の広さ、間取り、居住の有無など物件単位で扱う項目は多岐にわたります。
従来は紙媒体での情報のやりとりが中心でしたが、現在では弊社のサービスを含めてネットへのシフトが進みました。不動産の情報へのアクセスがより気軽になった一方で、情報のデジタルコピーが溢れるといった新たな問題が生じています。
その結果、不動産取引を行いたいエンドユーザーから見ると、間違った情報や実際のものと異なる情報が点在するなど、「どの情報が正しいかわか分からない」という現実とのギャップが生じています。

松坂 維大 様

不動産の売買や賃貸の取引は、取引単価が大きく、消費者にとっては一生に一度の大きな買い物になることも少なくありません。そうした重要な取引において、「情報」は極めて重要で、高い正確性・透明性が求められますね。

一例を挙げると、不動産取引における「おとり広告」と呼ばれる問題があります。条件の良い架空物件や、既に成約済の物件を広告することで、顧客から問い合わせがあった際に、別の物件を勧める手法です。ネット上において、成約済の物件データがすぐに削除されずに、結果として、おとり広告になってしまうケースもあります。こうした情報の非対称性や非効率性は、業界全体の業務効率を低下させるため、解決できないかと考えています。

ブロックチェーンというデジタルテクノロジーの活用

不動産取引に伴う情報の取り扱いの課題は、一社が単独で取り組むことは難しい問題です。不動産業界や関連する業界と、エンドユーザーが情報を一元管理し、みんなで同じプロセスを経て利用できれば理想ですが、実際には難しい。そのような中で、複数のプレーヤーで台帳情報を共有するブロックチェーンという技術が活用できるのではないか、という仮説から弊社では昨年から技術開発や検討を行ってきました。

御社は不動産業界の中でも早い時期からブロックチェーンを活用した取り組みを行っていますね。

ブロックチェーンはもちろんのこと、VRやAIなどあらゆるテクノロジーは、ユーザーの課題解決にどのように活用ができるか、といったことを日々検討し、スピーディーにトライしてみるということを繰り返しています。
不動産取引に関する情報は、正しい情報を持っている人とそうでない人が存在し、関連する業界も含めれば様々な業種のプレーヤーが不動産に関連する情報を保有しています。
建物や物件の状態について、空室なのか、いつ修復したのかといったあらゆる情報を、情報を保有するプレーヤーがブロックチェーン上に記録していくことで、情報の正確性やリアルタイム性を高めようと考えています。

あくまでテクノロジーは活用することが目的ではなく、ユーザーの課題解決の手段であり、日々エンドユーザーを意識しながらビジネスを推進されていますね。

不動産取引に関わるプレーヤーは多岐に渡り、エンドユーザー、不動産会社など、見る視点によって課題も変わってきます。特に、不動産の情報に関する取り組みの場合は、弊社単独ではなく、業界全体や異業種とのアライアンス、連携が重要になると考えています。
ブロックチェーンの普及を想定した分散型の社会をイメージした上で、消費者や不動産会社、様々なプレーヤーの価値観や行動がどのように変化するのか、不動産や不動産取引そのものについても、改めて考える必要がありました。
そうした中で、デジタル領域における戦略やアライアンス、そしてテクノロジーも含めた包括的な体制を構築できるNTTデータ経営研究所の皆さんとご一緒することにしました。

【プロジェクトの内容】

エンドユーザーを起点にしてリーンな推進を実現

今回のプロジェクトでは、不動産取引とその情報の共有に関してあるべき姿を導出し、課題特定をした上で、ソリューションとなるブロックチェーンの技術適用性を検証するために、ビジネスとテクノロジーの両軸でスピーディーな推進を行う必要がありました。
そこで、デジタル領域における戦略立案・実行を強みとするNTTデータ経営研究所と、デジタル技術の開発に強みを持つNTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパンによる7名の合同チームを組成しました。
両チームは、デジタル領域における専門性に加えて、リーンスタートアップ、デザイン思考、アジャイルといったアプローチ面での共通言語を共有していることが特徴です。そのため、スピーディーなプロジェクト推進が可能となります。
NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパンという会社について、ご紹介をお願いします。

NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパン(以下GTSJ)は、グローバル、テクノロジー、オフショア開発に強みを持つNTTデータの100%子会社です。インドにて日本向けオフショア開発を行っていた会社が母体となっています。
インドのオフショア開発拠点には2万6千人の開発者へのリーチがあります。大規模なオフショア開発プロジェクトはもちろん、AI、ブロックチェーン、カスタマーエクスペリエンス、ビッグデータといった先端分野に力を入れており、多数の実績と知見を有しています。
日本拠点は主に営業やリレーション、プロジェクト管理などの80名体制で業務にあたっています。

ありがとうございます。世界的にもエンジニアリソースが不足する中で、デジタル、特にブロックチェーンやAIを扱うことができるエンジニアのリソースは大きな強みですね。
まずはビジネスの観点からプロジェクトを振り返ってみたいと思います。

自分たちだけで検討を進めると、どうしても既存の延長線上で考え、結論ありきで早く構築したいという気持ちになりがちです。業界の中にいると当たり前なことも、第三者の視点からひとつひとつ固定概念をほぐして本質を捉えることで、課題を抽出することができました。そうすることで、抽象度や難易度が高くなりやすいデジタル領域において、全体を推進していくためのキーポイントを整理することができた点はとても良かったです。

社内だと、現状分析は、分かりきったことなのでとばしてしまいがちです。そこのところを、「なぜか?」「どうしてこのように考えるのか?」と深堀りをしていただくことによって、デジタルのトレンドを踏まえながら「意外と大きい課題が存在していそうだね」というような形でディスカッションをしながら気付くことができました。
既存の延長線上で考えがちなところに、現状整理はもちろんのこと、ディスカッションを重ねる中で本質を捉え、自分たちの考えや感覚を言語化していただいたので、目指す姿や、そこに至るまでの課題について具体化することができました。

不動産情報の課題に対するアライアンスのアプローチ

ありがとうございます。今回は不動産の情報取り扱いに関するビジネスの観点と、ブロックチェーンというテクノロジーの観点それぞれにおいて不確実性が高く、勘所を捉えるのが難しい取り組みだったと思います。

不動産情報の正確性や課題を解決するにあたり、私たち一社単独の取り組みでは難しいと考えています。個社単独の利益だけを考えていても本質的な解決には至りません。加えて、ブロックチェーンが持つ、分散型、非中央集権的な良さも活かすことはできないと考えています。
これまで長く業界として抱えてきた課題を解決するためには、新しい発想やテクノロジーの活用が必要で、個別の利益ではなく、まずは業界全体の利益を目指し、業界横断型で取り組むという考えに至りました。

不動産業界の市場規模は大きく、不動産取引に関係するプレーヤーや関連する業界の裾野はとても広いです。そのため、不動産の情報を持っているプレーヤーや、利害関係者も多いため、確かに個社単独で何かを行うことは難しいかもしれませんね。

デジタルビジネスや、スタートアップの台頭により、あらゆる業界が効率化、透明性が向上する中で、不動産業界も早期に対応し、取り組みを行っていく必要があると考えています。
エンドユーザーから見て、「住む」という暮らしの選択が行いやすい環境を作るために、業界横断型で課題解決に取り組み、共通の基盤を整備した上で、各社が独自のビジネスモデルで競争、勝負していくことが、業界全体、そしてエンドユーザーにとってあるべき姿であると思います。

デジタルテクノロジーの活用は手段のひとつ

次に、テクノロジーの観点から振り返ってみたいと思います。ビジネスサイドの検討と、テクノロジーサイドの開発をそれぞれがスピーディーなサイクルを回しながら連携していくアプローチで推進しました。

海外から見た日本は、モノづくり、製造業において高い品質と効率性を保つことは有名です。一方で、ソフトウェアの開発においては、ウォーターフォールで企画・要件定義に長い時間をかけて進めているものの、UI/UXに優れたプロダクトの創出には苦戦しているのが現状です。
そのような中、今回のプロジェクトでは、LIFULL様がアジャイルのアプローチに慣れていらっしゃったこともあり、3ヶ月という短期間のプロジェクトでしたが、効率よく進めることができました。

ユーザーや技術の変化が早く、不確実性が高いデジタルの領域では、大きなモノを先に作ってしまうのではなく、小さく作りながらユーザー視点や技術視点で仮説検証を繰り返していくことが重要ですね。

その通りです。今回も、パッケージ、ソリューションありきではなく、問題解決に必要な技術とアプローチをプロジェクトメンバーで共に考え、試行しながら進めました。
具体的には、ビジネスサイドの課題抽出と並行して、そこから得られる情報をインプットにいくつかのブロックチェーンの基盤を検証しました。課題解決への有効性を示す判断材料を提示させていただきながら、ビジネスとテクノロジーの両軸からプロトタイプの開発結果を細かく、小さなステップで進めながら、フィードバックを反映しました。

GTSJ

GTSJの皆さんと開発をご一緒する中で、アジャイルのアプローチはこれまでの自分たちの進め方に近いこともあって、すんなりと入ることができました。
これまで自分なりにブロックチェーンを触った経験はありましたが、実際にはその有効性や実態がつかみづらいと感じていました。今回開発を行うブロックチェーンの基盤選定においても、選定の際の評価軸や、選定理由についてディスカッションをさせていただきながら進めることができました。その際は、あらゆる選択のオプションを選定基準や理由を丁寧に説明しながら提案をしていただき、とても有難かったです。

弊社では、特定のソリューションや基盤を販売するのではなく、あくまで開発力が商品です。そのため、ブロックチェーンの基盤選定においても、ビジネスの観点から抽出された課題に対して、よりフィットするのはどの技術なのか、という観点で選定することができます。
加えて、ブロックチェーンを活用したプロジェクトは、世界各地で実施しており、ユースケースの蓄積が知見となり強みの一つとなっています。

また、当初不安だった英語という言葉の壁も、日本語が通じることで、まったく問題ありませんでした。

確かにシタルさんたちは「日本人よりも日本語が上手いのではないか」、と感じることがよくありますね、こんな言い回しができるのかと。

(一同笑)

インタビュー全体写真

不動産情報の共有を実現するプラットフォーム

今回、検討を行った結果、ビジネスサイドでは異業種を含めた複数プレーヤーでの不動産情報の共有モデル、コンソーシアムのような形態を目指すことになりました。プロジェクト期間中は、想定されるアライアンス先を洗い出して、一社ずつディスカッションさせていただく機会を設けました。LIFULL様が見据えるビジョン、ビジネスモデルを言語化し、さらにそれをブロックチェーンのプロダクトとしても見える形にして、各社とのコミュニケーションを実施しましたが、その取り組みについて教えてください。

実際にコンソーシアムを見据えて共同検討に誘致を行う際は、ブロックチェーンというキーワードや、不動産業界という大きな市場での新たな取り組みそのものについて強い関心をいただくことが多かったです。しかしながら、実際に話しを進めていくにはより具体的な将来像や狙いについてお話する必要があります。加えて、ブロックチェーンというテクノロジーがどのように関わるのか、ご理解いただく必要がありました。
その際も、エンドユーザーから見たあるべき不動産取引と課題、そして実際にデモとしてお見せをできるブロックチェーンの基盤が用意できたことで、有意義にアライアンス展開を進めることができました。

今回は国内のみならず、北米、欧州、中東といった海外のプレーヤーの皆さんとも接点を構築しました。今後の海外展開の可能性についても教えていただけますか。

海外で政府系のシステム会社の人と話をしても、不動産領域で、複数の企業がコンソーシアムを組み、ブロックチェーンを活用して不動産のさまざまなデータを連携して共有を目指す事例は少なく、現地の政府系・民間企業の方々から強い興味を持っていただきました。国によって土地や物件の管理、取引形態などに違いはあるものの、市場規模が大きく、取引に際して情報のやりとりが課題になっている点は共通している部分が少なくないことが分かりました。

 加藤 哲哉 様

グローバルな不動産取引においても、CtoCのプラットフォームのように、世界中で利用される共通基盤を構築できれば、新たな市場を開拓できると考えています。それを実現するための答えの一つがブロックチェーンの活用にあると考えています。

今回、ビジネスとテクノロジーの両軸からグローバルに展開できるチーム体制を築けたことで、国内で上手くサービスを稼働できれば、グローバルにも展開ができそうですね。

NTTデータグループが持つ強固なグローバルリレーションを通じて、世界各国のブロックチェーンの切り口やユースケースを部分的に取り入れながら、日本独自のサービスを海外に展開していくなど、これからのグローバル時代にあった取り組みも期待できます。

 オフショア写真 オフショア(インド)メンバーを含めたビデオ会議の様子

【プロジェクトの成果】

今回3ヶ月という短い期間の中で、異業種を含めた複数のプレーヤーによる不動産の情報共有プラットフォーム構築に向けた共同検討の開始、そしてブロックチェーン基盤のプロトタイプの開発という2つの成果が得られました。今後の展望について教えてください。

不動産・住所情報に紐づいたデータを持つ企業はたくさんあるものの、それらを上手く活用できずに社内利用で留まっているケースは少なくありません。今後、それらのデータをつなぎ合わせることで、エンドユーザーが正確な情報に自由にアクセスできる機会を生み出していきたいと考えています。今回は趣旨に賛同くださった異業種3社の皆様に参画していただき、コンソーシアムの立ち上げに向けて共同検討をスタートしました。

LIFULL様を含めた4社では、すでに具体的なユースケースやビジネスモデルについて議論を行っています。

異業種の各社がそれぞれ保有するデータや、ビジネスモデルを相互理解することで、不動産の情報共有によって何ができるのか、何をしなければならないのか、具体的な議論をすることができています。いくつかのユースケースや検討課題の導出が行われているので、これらの検討をベースにして、ブロックチェーンの商用化に向けて次のステップに移行できればと思っています。

不動産は、物件としての側面に加え、金融の側面も持っています。例えば、建物の価格がどのように変化していきたのか、という情報や、室内の設備やその修復履歴といった粒度の細かな情報を誰もが自由に見ることができるようになると、メンテナンスのタイミングやコストの予想もスピーディーにできるようになるでしょう。
さらに、不動産の所有の観点で見てみると、不動産の所有権の小口化などが進むと、不動産に「投資をすること」、「住むこと」の違いは何なのかといった、住まい探しそのものを見直すきっかけになる、そのような時代がくるかもしれません。

デジタルによる変革を業界横断で実現へ

デジタルテクノロジーによって不動産業界は大きく変化していく入り口なのかもしれません。

例えば、ブロックチェーンによって、誰もが物件の空室状況や、間取りなどのスペックの情報を全て把握できるようになると、私たちを含めた既存のサービスが必要なくなる、といったことも想定されます。過去の産業革命において、一般労働者が自分たちの雇用を守るために機械を壊したという話があるように、自分たち自身の事業領域や、業界の既存事業が破壊されてしまうというイノベーションのジレンマと、どのように折り合いをつけながら変革を加速していくかがポイントになります。とはいえ、そこは、やはり意思のある人たちで前に進めていくしかありません。

情報を一元化して管理できていないことによる課題は、不動産業界固有の問題ではなく、ほかの業界でも似たようなは課題は多いと思います。今回、私たちがブロックチェーンを活用して生み出していく実例が、他の業界にも波及し、新しい世界が見えてくると面白いですね。
今回のコンソーシアムへ向けた取り組みも、不動産業界、関連する業界のより多く皆様のご参画を呼び掛けていきたいと思っています。

デジタルビジネスは変化が早く、勘所も掴みにくいことから、検討テーマや、その座組みが肥大化しやすいです。理想的なあるべき像に向けて、解決すべき課題は多く、一歩一歩仮説検証を繰り返しながら、進めていく必要があります。不動産業界におけるデジタルテクノロジー、ブロックチェーンの異業種間での活用は、前例がほとんど無いチャレンジングなことです。変革と共に新たな価値を創出されたい企業の皆様と積極的に連携していければと思います。
皆さん本日はありがとうございました。

 集合写真

■本記事の関連情報
不動産情報の共有におけるブロックチェーン技術を活用したプラットフォームの商用化に向けた共同検討を開始(2018年6月22日プレスリリース)


■お問い合わせ先
<本内容に興味のある方>
不動産ブロックチェーンコンソーシアムへの参加検討や、内容についてお問い合わせがある方は下記までご連絡ください。


<デジタルストラテジーコンサルティングについて>
ビジネストランスフォーメーションユニットでは、不動産・金融・通信・医療、あらゆる業界の皆様にデジタル領域における戦略の立案・実行支援を提供しています。