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海外事例に学ぶ邦銀のSNS活用の今後

NTTデータ経営研究所
エグゼクティブコンサルタント 山下 長幸

 近年、金融機関におけるFinTechやデジタルイノベーションの取り組みが加速化している。その中でSNSの活用もテーマの1つとして取り上げられていることが多い。

 代表的なSNSの日本国内月間アクティブユーザー数を見ると、Facebookが2015年3月の2,400万人から2017年9月に2,800万人に、Twitterも2016年9月の4,000万人から2017年10月に4,500万人と伸ばしており、金融機関としても重視する価値のあるマーケティングメディアとなっている。

 本稿では、米国の大手金融機関におけるSNSへの取り組み状況などから、日本の金融機関がSNSをどのように活用すべきかを考察していきたい。

米国大手金融機関におけるSNS取組み状況

(1)バンクオブアメリカ・メリルリンチグループ

 図表1は、バンクオブアメリカ・メリルリンチグループ(以下、「BoA・MLG」と称する。)におけるSNS取組み状況である。全体としては7種類、24アカウントとなっている。日本の金融機関と比べると、種類・アカウント数ともかなり多く、同グループが顧客接点を増やし、顧客との双方向のコミュニケーションを積極的に取ろうとしている姿勢が見受けられる。

 Twitterに関しては、グループ会社別のアカウントに加えて、「バンクオブアメリカを扱ったニュース」「問い合わせ専用アカウント」「金融に関する有益なアドバイス」など特化したテーマでのアカウントを開設しているところが特徴となっており、アカウントによっては50万人近いフォロワー数を有しているものもある。Twitterに問い合わせ専用アカウントを設置しているところは、日本の金融機関も見習うべきであろう。LinkedInは米国では採用や業務で盛んに利用されていることもあり、Bank of America のアカウントは95万人の登録者数を誇っている。Facebookは280万人近いフォロー者数があり、日本のメガバンクなどと比べてひと桁大きい数字となっている。さらにはYouTubeやInstagramなどの動画や写真投稿SNSも積極的に利用している。

 BoA・MLGにおけるSNSへの投稿内容としては、日本の金融機関でもよく取り組まれているニュースリリース、社会貢献活動など広報的なものや商品サービス紹介に加えて、子供向けの金銭教育、シニア世代向けの資金計画、中小企業向けの財務知識などファイナンス教育コンテンツに力を入れているところが特徴となっている。いきなり商品サービスキャンペーンではなく、金融教育や金融ノウハウなどの投稿コンテンツを提供して顧客とのリレーションをじっくり築こうとしているところは共感できるものがある。採用に関してもSNSを積極的に利用し、通常の中途採用等に加え、マイノリティや障がい者の採用に取り組んでいることも積極的にアピールしている。

 BoA・MLGでは、基本方針として、SNSに積極的に取組み、顧客とのコミュニケーションを活発にとり、顧客に役立つことを表明している。この点、日本の金融機関によるSNS活用の場合、金融機関側からの片方向の情報発信がメインで、まだまだ顧客との双方向でのコミュニケーション手段としての利用は十分でない状況である。

【図表1】バンクオブアメリカ・メリルリンチグループにおけるSNS活用状況

図1.イノベーションの基本要件 出典:NTTデータ経営研究所調査分析
*2018年7月24日時点

(2)ウェルズファーゴグループ

 図表2は、ウェルズファーゴグループ(以下「WFG」と称する。)におけるSNS取組み状況である。全体としては7種類、18アカウントとなっており、BoA・MLGと同様に種類・アカウント数ともかなり多く、WFGが顧客接点を増やし、顧客との双方向のコミュニケーションを積極的に取ろうとしている姿勢が見受けられる。

 Twitterに関しては、BoA・MLGと同様に、グループ会社別のアカウントに加えて、特化したテーマでのアカウントを開設しているところが特徴となっている。WFGの場合「Wells Fargo SmallBiz」で中小企業における融資申込ノウハウ、人材採用ノウハウなどを投稿したり、「WellsFargo Wholesale」でPCのセキュリティー対策、データ分析の仕方など組織管理ノウハウなどを投稿するなど、中小企業向けのコンテンツ投稿のアカウントを設置しているところが特徴的である。

 Twitterの投稿コンテンツ中に「氏名@氏名WF」のアカウント名で顔写真付きのウェルズファーゴ職員による投稿が散見される。これは銀行から公認された職員投稿者だと想定される。人数は不明だが、1ヵ月間に20名程度は見受けられたので、数十人規模であることが想定される。この仕組みにより、職員の顔が見える形で、多種多少な視点で、1日1回以上の多頻度での投稿を可能にしているものと考えられる。

 WFGにおけるSNSへの投稿内容としては、BoA・MLGと同様に、ニュースリリース、社会貢献活動など広報的なものや商品サービス紹介も多いが、子供向けの金銭教育、資金運用ノウハウ、融資を得るノウハウなどファイナンス教育コンテンツに力を入れているところも特徴となっている。このような金融教育・金融ノウハウの投稿コンテンツは日本の金融機関でも実施検討する価値が高いと考えられる。

【図表2】ウェルズファーゴグループにおけるSNS活用状況

【図表2】ウェルズファーゴグループにおけるSNS活用状況 出典:NTTデータ経営研究所調査分析
*2018年7月24日時点

日本の金融機関におけるSNS取組みの方向性

(1)基本姿勢

 まずSNSへの取り組み方針として、広報や商品サービスのマーケティングという情報発信のみならず、顧客との双方向のコミュニケーション手段だと位置づけるべきである。テレビや新聞などの伝統的なメスメディアによるマーケティングは基本的に企業からの片方向の情報発信であるが、SNSは顧客側から企業にコミュニケーションを取れるところが大きく異なり、この特徴を十分に活かすべきである。BoA・MLGやWFGにおいて、顧客からの専用問い合わせアカウントを設置したり、採用専用のアカウントを設置しているのは、顧客や採用候補者との双方向のコミュニケーションを重視している証左と言うことができ、日本の金融機関においても実施検討すべき事項であると考えられる。

(2)テーマ別のアカウント設定

 顧客接点としてのSNS活用を考えた場合、BoA・MLGやWFGのようなテーマ別アカウントの開設を日本の金融機関でも実施検討すべきであろう。対象顧客別としては、個人向け・法人向け、投稿コンテンツ内容別としては、金銭教育・採用・問い合わせなど様々な切り口が考えられる。SNSアカウントにアクセスする動機がはっきりしている顧客からすると、テーマ別になっている方が、アクセスがしやすいこと、過去の投稿内容を参考にしやすいこと、投稿コンテンツとしても顧客ニーズに合致しやすいことなどのメリットが考えられる。

(3)投稿コンテンツ

 現状の日本の金融機関のSNS投稿コンテンツの主流は、地域貢献活動などの広報的なコンテンツと商品・サービスキャンペーンがメインとなっている。無難な投稿コンテンツで炎上リスクは低いが、多くの金融機関で大きなアクセス数は獲得できていないと想定される。顧客側からすると、金融機関はお金に関するプロというイメージがあり、その方向性に沿ったコンテンツを期待するであろう。たとえば子供を持つ親向けには、子供のお小遣いをどうしたら良いか、子供のお金の使い方をどう考えた良いのか、子供の貯蓄習慣をどう持たせたら良いのかなど子供の金銭教育に関しての悩みは多いであろう。それらに関して金融機関側から情報発信がなされ、子供を持つ親から質問が来るなどと言う状況が双方向の顧客コミュニケーションであり、顧客との親密なリレーションを構築する手段になると考えられる。このようなテーマは、中小企業の資金繰り、不動産購入と住宅ローンなど様々考えられ、金融機関としてテーマ検討して頂きたいと考えている。

(4)SNSへの広告出稿

 SNSへは、自金融機関アカウントへのコンテンツ投稿だけでなく、広告出稿も可能である。SNSの広告出稿ページからは性別、年齢層、居住地域、趣味など様々なターゲット属性設定が可能である。さらに、例えば、SNS側でユーザーの位置情報が収集できている場合、金融機関の特定の営業店の近くに最近いたSNS登録ユーザーに広告配信するという設定も可能である。ただしSNSへの広告出稿の場合、カードローンや住宅ローンのキャンペーン広告で、Webで一般的なリスティング広告よりも満足のいく顧客獲得単価を達成するのは難しいであろう。むしろSNSの本旨に立ち返り、顧客との双方向コミュニケーションを促進するような広告コンテンツの方が望ましいのではないかと筆者は考えている。上記の金銭教育コンテンツ、不動産購入と住宅ローンコンテンツなどをアップしたことに関する告知広告から、自金融機関アカウントもしくは自金融機関Webサイトに誘導して顧客コミュニケーションを充実させることが有効であろう。

(5)ソーシャルリスニング

 SNS初期のソーシャルリスニングは自社へのインターネット内での否定的な発言など風評を監視する目的で行われた。大手のB2C企業では、24時間65日監視するため、専門会社に業務委託をしているところもある。そこまでやる必要のない企業でも、1日1回社員が情報収集して定期的に役員会に報告しているところもある。

 上記に加え、昨今のソーシャルリスニングは、SNSに投稿された情報を収集分析し、自金融機関の商品開発やサービス改善につなげたりしている。顧客の要望不満を収集分析するのであれば、生活者アンケートを実施することでも可能であるが、生活者アンケートは、検証したい仮説に沿って設問を設計するため、思わぬ発見が難しく、また質問者の意図をそんたくしたような真意でない回答をしがちであるのに対し、SNSの場合は、登録ユーザーの自然な気持ちが表現されることが多いので、思わぬ発見があったり、真実に近い顧客理解が可能となるメリットがある。

 ソーシャルリスニングを実施する対象のSNSとしては、Twitterが最有力である。FacebookなどのSNSでは投稿情報を友達限定にしていることが多く、外部からの情報収集が難しいのに対し、Twitterの場合、世間に状発信するために利用しているユーザーが多く、外部からの情報集が容易だからである。ただし、投稿データ量が膨大なので、分析ツールの利用が必須である。弊社でもご提供しているので、必要な場合は問合わせされたい。