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金融業におけるイノベーション組織のつくりかた・育てかた

情報未来イノベーションセンター
マネージャー 河原 陽一

<はじめに>

 業法や様々な規制によって提供サービスの制約がある金融業界は、業務のIT化による正確性やスピードの向上に努め、業界内での競争力を維持してきました。

 しかし、Webやスマホアプリの活用による非対面チャネルの充足、バイタルデータや機器のセンサを活用しての行動分析によるリスクヘッジやリスク診断システムなどが続々と実現されてくる中、従来からの自社情報資産を活用した仕組みは既にコモディティ化しつつあると言えます。

 一方で法律や規制に(金融機関ほどは)縛られないFinTechベンチャーはテクノロジーを使って金融機関を束ねた、あるいは他のサービスとマッシュアップしたサービスを続々と提案し、生活者に受け入れられています。今や、金融機関はその存在意義を脅かされていると言っても過言ではないでしょう。

 この状況へ対応すべく、多くの企業ではイノベーションを旗印に、新サービスや商品の開発を目的とした新組織やプロジェクトを立ち上げていますが、成果を出すに至る道のりは決して平坦ではありません。

 本レポートは筆者が実際に関わったイノベーション組織立ち上げやサービス開発プロジェクトも踏まえながら、イノベーション組織のつくりかた・育てかたについて論じていきます。

  • 【1章.イノベーション=「3つの解放原則と習慣化」】
  • 【2章.金融機関におけるイノベーション阻害要因】
  • 【3章.イノベーション=生活者体験価値の創出】
  • 【4章.イノベーション組織のつくりかた】
  • 【5章.イノベーション組織の育てかた】
【1章.イノベーションとは】

 イノベーションという言葉は今やビジネスマンには馴染み深いものとなっています。しかし、言葉の定義や意味をあまり深く考えず、厳密な定義をしないまま「とにかく新しいモノ・コトをやってみよう」程度の認識で走り出してしまうことも多いようです。「やってみよう」はイノベーション実践のキーの一つなので否定はできませんが、無闇にやってみたところでビジネスとして成立しないと意味がありません。

 筆者の考えるイノベーションの定義は<図1.イノベーションの基本要件>の通りです。

<図1.イノベーションの基本要件>

図1.イノベーションの基本要件 出所:NTTデータ経営研究所にて作成

 これらの主語は「生活者」です。目的は「新たな体験価値の創出」となるでしょう。これら基本要件の全て、あるいは3つ以上を満たすソリューションがイノベーションと言えると考えます。

 我々に身近な製品で例示してみましょう。カップ麺、携帯音楽プレイヤー、インターネット(仕組み自体と、この仕組みを使ってのメールやSNS、動画配信サービスなど)・・・例を拳げるとキリがありませんが・・・これらは生活者の新たな体験価値を創りだすことに成功しています。カップ麺は調理にかかる手間や技能から人を解放し、屋外でも簡単に食事ができるようになりました。携帯音楽プレイヤーは運動をしながら音楽を聴くことを可能にしました(最近は防水機能によって水泳をしながらでも聴けます)。飛行機でも電車でも、許されるならば職場での仕事中にも、気兼ねなく自分の好きな音楽に浸ることができます。電子メールやSNSは時間も国境も飛び越えてコミュニケーションができますし、昔は映像作家でないと作れなかった・発信できなかったようなムービーも、誰でも気軽に作って世界中の人に発表し、その反応を手のひらの携帯端末でリアルタイムに確認することができます。もはやこれらがなかった時代に戻ることはできないでしょう。

 金融サービスに「3つの解放原則と習慣化」を当てはめたらどうなるでしょうか。インターネットバンキングや、保険料の一括見積もりサイトが時間・場所・技能からの解放は満たしていますが、これで生活者が新たな体験価値を得ていると言えるでしょうか。この問題は2章で深掘りしてみたいと思います。

 ここで、もうひとつ別の観点からイノベーションを定義してみます。その理由は、イノベーションの意義が濫用されることで、いまあるモノ・コトが不当に、あるいは必要以上に排除されてしまうことを避けるためです。

 イノベーションの反対語は何でしょうか。

 これは筆者がよく用いる問いかけですが、戸惑われる方が多いです。上述の定義を逆にして「時間・場所・技能に縛られていること」と答える方も多いですが、これだと「非イノベーション」と言っているのと同じで、正解とは言い難いでしょう。筆者はイノベーションの反対は「トラディショナル」が適当だと考えます。企業と人とが長い営みの中でルール化した、あるいは暗黙知を積み上げて成立しているモノ・コトがトラディショナルだとすれば、連綿と続いてきた背景(理由)があるので古臭い、と切り捨ててしまうのは誤りでしょう。

 イノベーションを目指すときは、かならずトラディショナルと対で価値判断をしていく。これがイノベーションの取り組みへの第一歩だと考えます。

【2章.金融機関におけるイノベーションの難しさ】

 イノベーションの定義を第1章の通り「3つの解放原則と習慣化」による生活者の新たな体験価値の創出だとすると、「インターネット+スマホにいまあるサービスを載せてしまえば、それがイノベーションになるのでは」という疑問が出てきます。

 大枠ではその通りかもしれません。しかし、これは言ってしまえば単なる方法論であり、全ての金融機関が「仕組みを導入すれば等しく実現できてしまう」ものです(等しく・・・といいつつも、開発労力やコストは個々の金融機関のシステム化やデータのデジタル化の対応状況次第なので対応難易度は異なりますが)。これは金融機関のイノベーション組織が(必ず、と言っていいでしょう)最初にぶつかる「壁」です。せっかくフィンテックを導入しても「競合他社と区別がつかない・・」ということでは、イノベーションは実現したのではなく、「イノベーション(らしき)技術を導入して業界のIT導入水準をクリアした」というだけのことになってしまいます。

 これはデジタルがコモディティ化してIT各社がソリューションを容易にパッケージングできる現在、最もありがちな構図です。エッジの効いた(ように聞こえる)技術を使うこと自体をイノベーションと取り違えてしまう「イノベーション迷路」に陥ってしまうのです。これでは単に今あるサービスをシステムに置き換えた、あるいはこれらシステムの用途開発をしたにすぎず、金融サービスの受け手たる生活者に向けて新たな体験価値を創出した、とは言えないでしょう。

 イノベーションという以上、新しい独自のコンテンツを通して生活者に新たな価値を提供しなければならないのです。これが2つめの「壁」です。冒頭でも触れたように、金融業は銀行にせよ保険にせよ「規制ビジネス」であり、その規制を手続きとして仕組み化することがビジネスだったのです。やや大げさかもしれませんが、生活者にとって利便性の高いコンテンツを作成することは求められてきませんでした。

 「業務規制の足かせゆえに本業以外に事業展開は困難、しかし他業態からはオルタナティブな金融サービスを武器に自陣にどんどん攻め込まれる」という状況にある今、既存サービスをシステム化するにとどまらず、生活者目線でサービスを再設計する、別の言い方をすると自社の提供価値を新たにデザインすることが求められているといってもいいでしょう。仕組み化からコンテンツ化にシフト、という言い方もできるかもしれません。

 サプライチェーンやバリューチェーンといった、伝統的フレームワークで定義された業務プロセスや組織での対応ではコンテンツ化には限界があります。3章ではこれをブレークスルーする「コンテンツを生み出す生活者目線」について考えていきます。

【3章.イノベーション=生活者体験価値の創出】

 生活者目線という言葉自体は特段目新しいものではありませんが、これもイノベーション同様にきちんと定義しておきます。

 生活者目線とは何でしょうか。ありがちなのが「お客さま視点」との混同です。「お客さま視点」は、自社サービスの使い勝手を自社内で論ずる場合の「考え方のルール」で、評価対象は自社サービスになります。

 生活者目線は、自社サービスを起点とした考え方ではありません

  • 商品やサービスがどこで使われるか(場所からの解放に関連)
  • いつ使われるか(時間からの解放に関連)
  • どのように、または何といっしょに使われるのか(技能からの解放に関連)

といった広い視点からの評価で「生活者体験価値の定義」です。 図2.は「生活者体験価値」を可視化するツールです。何もないとイメージが湧きにくいので、ここでは消費財を新たに購入・利用・習慣化してもらうためのタッチポイントを探すというテーマで例示してみます。

<図2.生活者体験価値可視化ツール(例)>

図2.生活者体験価値可視化ツール(例) 出所:NTTデータ経営研究所にて作成

 紙面の都合で時間軸が非常に粗いですが、実際には大きなサイズの紙や壁面に30分とか1時間という小さな単位でプロットしていきます。図3.はモビリティメーカーやスポーツ用品メーカーなどとのアイデアソンの際に実際に使った事例です。例えば、電車の乗り換えの待ち時間の無駄をレンタルバイクや自転車でカバーできないか、お風呂に入りながら美容にもつながるゲームは作れないか、犬と楽しめるお散歩カメラというコンセプトはどうかなど、実に多くのアイデアが出てきます。自社製品にとらわれず、生活者が触れうるものを羅列することで様々なアプローチや製品機能の切り口が見つかります。

 最近は典型的な顧客のモデルを「ペルソナ」として定義し、ターゲティングをより実践的にするということが普通に行われるようになりました。しかし、年齢・性別・生活習慣といった表層的な人物像にとどまり、行動と行動の間や行動理由の可視化まではされないことが多いようです。このツールはペルソナのアドオンとして使うと効果的です。行動には常に理由があり、その理由まで書き込むことで、ペルソナでは気づき得ない「不便」「不満」や「理由」が得られるのが特徴です。この方法で考えると、ペルソナ上では同じような人物像になる人でも意外に差異があることがはっきりします。また、これは「実は何もしていない隙間時間」や「スマホのゲームやSNSに拘束されているだけの時間」を洗い出すことにもなります。漠然と体験価値を作るのではなく、現在のコンテキストをもとにした「体験価値の差し込み場所」をデザインすることもできます。

 生活者目線で考えることは「言うは易し行うは難し」の典型例のようなものだというのが私の印象です。とりわけ、部門間の異動に積極的ではない金融機関、あるいはお客様と直接対面することのない間接部門の方は生活者目線からの商品・サービス定義には苦労されることが多いようです。自らが所属する部門とその前後のバリューチェーンが考え方の基軸になってしまっているからでしょう。様々なツールを使ってワークショップをやっても、自社バリューチェーンや仕事のプロセスの問題点(しかも、それは生活者からは直接見えない)に目がいってしまいがちです。これでは「イノベーションを目指していたのに、気づいたらBPRをやっていた」となりかねません。また、既存組織での対応はビジネスルールと習慣が足かせになってしまいます。

 やはり、イノベーションに特化した組織を創り、価値観を「再インストール」することが必要になってきます。第4章ではイノベーション組織の作り方について考えてみたいと思います。

【4章.イノベーション組織のつくりかた】

 ありがちなのは、「自分たち(だけ)では推進できないから外部の有識者に委託する」とか「既存の価値観に縛られていないベンチャーを活用する」というものです。これらは既存価値観からの解放には有効ですが、ややもすると丸投げ、あるいは「既にあるソリューションに乗っかる」だけになってしまいがちです。イノベーションを「これからの会社のカルチャー」として位置づけ、自社がドライバーとなって進めないと、「多忙な業務に新たに追加された面倒な管理タスク」になりかねません。

 筆者が関わったイノベーション組織立ち上げのプロジェクトも踏まえながら、イノベーション組織の作り方について「プリンシプル策定」「プロセス設計」「役割設定」の3つの観点から説明します。

<プリンシプル策定>

 イノベーション組織の存在意義および意思決定の拠り所になります。コンセプトを具体的な商品・サービスに落とし込んでいく過程で、必ず「リスクは取れるのか」とか「他社比優位性は」とか「先行事例は」などと既存業務プロセスでの価値判断基準が首をもたげてきます。これではイノベーション組織を立ち上げた意味が失われてしまいます。

 最大のポイントは「既存価値観に縛られないで良い」ことを言語化することです。既存価値観は言ってしまえば会社の古い慣習、あるいは課題です。「迷ったら困難なほうの道を」とか「調べるなら考えるな、考えるなら調べるな」など、少々極端に聞こえるような言葉が良いでしょう。

<プロセス設計>

 イノベーションはアイデアだけでは現実に起こりません。実現したいモノ・コトの存在意義=社会価値や事業価値=に裏付けられる必要があります。これらを裏付けるためには突然サービスを立ち上げるのではなく、生活者に対し、サービスの意図や自社事業として実施する意味を徐々に浸透させていく必要があります。具体的には、調査研究や実証実験の実施、その成果のとりまとめと公表、協業社との共同研究やビジネス化の検討、生活者や関連事業者にサービスプロトタイプに触れてもらい、サービス品質を担保してくことも必要でしょう。これらをステップbyステップで実行していくための行動の雛形=プロセスを標準化しておく必要があります。図3.はイノベーション組織の業務運営プロセスの例です。

<図3.イノベーション組織業務運営プロセス(例)>

図3.イノベーション組織業務運営プロセス(例) 出所:NTTデータ経営研究所にて作成

 「調査研究」「開発・ローンチ」「ビジネス創造」の3プロセスと、そのプロセスを構成する(細分化される)サブプロセスから成り立つモデルです。

 通常であれば調査研究からイノベーションの結節点を作りにいくというところからスタートとなりますが、このプロセスではどこからでもスタートできるようにしています。手続き偏重にならないこと、スピードと品質と個人の興味による深堀をバランスさせ、組織ポテンシャルが最大限発揮できることを意図したものです。続く5章で触れますが、メンバーのスキルは一様ではありませんし、一様に揃えることもできません(教育・研修をしたとしても)。得意なところから始める、あるいはメンバーが相互に弱みを補完することができれば良いのです。「枠にはめたことでメンバーのポテンシャルを引き出せなくなる」ことがないように、柔軟なプロセス設計と運用が求められます。

<役割設定>

 これは非常に悩ましいところです。全員をプレイヤーとしてしまうと組織としての意思決定ができなかったり、QCD(Quality:品質 Cost:費用 Delivery:納期)管理が客観的にできないということになってしまいます。

 しかし、決定権を持つ者を置いてしまうと、「管理されたイノベーション」となってしまい、第3章にも書いたような「気づいたら効率化のためのBPO案件ばかりになっていた」ということになりかねません。これを防ごうとすると今度は「どんなプランにもOKを出すだけの人」になってしまいます。イノベーション組織としての独立性を保ちつつ、会社としての統制を担保していくことが求められるのです。

 この問題に対する解の1つが、メンバー全員に「自らが立案した案件以外では管理者としての立場で振る舞う」という役割を割り当てることです。例えば図3.の各サブプロセスは「立案」「レビュー」「承認」というアクティビティを内包しています。ここでは自分がレビュアーになったり、レビュイーになったりするので、独立性を保ちつつ、会社の統制を担保することが可能になります。

 この方式を採る場合はイノベーション組織内部の運営を第三者的に評価するコーディネーター(運営事務局)の設置が必要です。プレイヤーたちの課題解決に第三者として助言・仲介したり、価値観(モラルや振る舞い)を会社全体として統制していく必要があるからです。また、コーディネーターはイノベーション組織の成果(中間成果含む)を既存組織に共有するという役割もあります。これはイノベーション組織と既存組織の価値観が相容れない場合に対立してしまうことを防ぐためです。

【5章.イノベーション組織の育てかた】

イノベーション組織をつくり成果を出せたとしても、そのナレッジやノウハウが組織に蓄積していかなかったらその組織の価値は半減してしまいます。ナレッジやノウハウを引き継いでいくには仕事のプロセスや成果物を標準化・可視化して「組織カルチャーとして育てていく」ことが望まれます。では、どういう状態になったら「育った」ことになるのでしょうか。

本レポートでは、イノベーションとは「3つの解放原則と習慣化による生活者体験価値の創造」であるとしてきました。つまり、この構成要素を網羅的に創り出せる状態になれば、「イノベーション組織として育った」と言えることになります。これをスキルマップとして可視化したのが図4です。

<図4.イノベーションスキルマップ>

図4.イノベーションスキルマップ 出所:NTTデータ経営研究所にて作成

 オレンジ色の部分は生活者が認識(実感)できる価値です。その価値をビジネスに必要なアセットとして要素分解したものがブルーの部分です。簡単に説明します。

「1.サービス」

  • 有形・無形の2つに大別されます。
  • 顧客にとっての価値現実化のプロセス全体、一部の2つに大別されます。
  • 顧客の経済的負担はあり・なしのいずれもがあります。
  • 提供手段としてはpush/pullの2つに大別されます。
  • 提供者がコンテンツを提供しないサービス(クラウド事業など)もあります。

「2.ソリューション」

  • 生活者の課題を解決する「仕組み」です。
  • 仕組みは人が提供する労務、システムが提供するデータやコンテンツなど、2つに大別されます。

「3.ビジネスモデル」

  • サービス/価値提供プロセス/経済的負担/提供先(受益者)の定義です。
    B2B、B2C、B2B2Cなど、課金モデルで言い表すのがわかりやすいでしょう。

「4.UX(ユーザーエクスペリエンス)」

  • 生活者体験価値を指します。
  • 体験価値は本質価値と付加価値の2つに大別されます。

「5.ユニバース」

  • ビジネスモデルを成立させる「世界観」です。生活者やサプライチェーンの仕組みを指します。単純にプレイヤーとすると、そのプレイヤーが果たす役割にのみ注意が行ってしまいがちです。これらが持つアセット(情報資産)にも注目するために独自の言い方としています。
  • アセットには「今あるもの」だけでなく、「あったら良いもの」という観点(仮説)も含みます。

「6.課金モデル」

  • ビジネスモデルを成立させるための、ユニバース内での「価値交換の公式」です。
    単純化すると価値と対価がイコールになるための公式になります。
  • 価値交換は当事者間、第三者介在型の2つに大別されます。

「7.業務」

  • ビジネスモデルの提供者の内部にあるプロセスです。イノベーションを実現するにあたって、既存プロセスの改善や切り出しが必要になります。

「8.IT」

  • 提供者が保有・利用するデジタル資産です。
  • 基盤、ネットワーク、プログラム、データに大別されます(OSI参照モデルなど、様々な分類の仕方がありますが、ITの専門家以外にもわかりやすい概念で表しています)
  • 鳥瞰図的な仕組みを知るだけでなく、外部連携をするためのAPIやデータの取得・加工プロセスまで知っていることが好ましいです。

「9.UI(ユーザーインタフェース)」

  • 価値提供者と生活者の接点です。モノとコトに大別されます。スマホのアプリやコミュニケーション誌、コールセンターといったいわゆるチャネルと、生活者参加型のイベントのようなコトに大別されます。

「10.コンテンツ」

  • 生活者から見たサービスの中核=生活者体験価値そのものです。優れたUIやITに加え、優れたコンテンツがあって初めてイノベーションと言えます。

これら10個のスキル要素を統合的に理解・ハンドリングできるよう、メンバーのスキルアップを図る(自発と教育)ことが求められます。全てのスキルをメンバー一人ひとりで完結できるようになる必要は必ずしもありません(できたら素晴らしいことですし、それを目指すことは一貫性のあるサービスデザインやエッジの尖ったシステムを作ることを可能にするので好ましいことですが)。イノベーション組織のメンバーのスキルを組み合わせ、あたかもパズルのピースで埋めるようにスキルマップが網羅できれば良いのです。このスキルマップを網羅し続けるような人材配置や協業態勢を整備できたとき、イノベーション組織が完成したと言えるでしょう。

<おわりに>

 5つの章立てで金融機関のイノベーション組織のつくりかた、育て方について論じてきました。イノベーションは技術にのみ依存するものでもありませんし、万能感を感じさせるようなバズワードに腰を浮かせて取り組むものでもありません。生活者にとっての体験価値を独自に定義し、それを最新の状態、もっと言えば未来を鳥瞰・予測して更新し続けること、そして、それを企業のカルチャーとして定着させる組織作りと能力開発こそがイノベーションの起点なのです。

 当社では、「イノベーション組織の立ち上げ・育成・運営支援」および、「イノベーション商品・サービス開発支援」をパッケージングしたコンサルティングサービスをご用意しております。本レポート内で触れた生活者体験価値を具現化するためのアイデアソン・ハッカソンやイノベーションスキルの可視化についてはこれらパッケージから独立させたシンプルで低廉なワークショップ形式でのご提供も可能です。お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。