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組織・個人のパフォーマンス向上に貢献する脳科学

情報未来イノベーションセンター
ニューロイノベーションユニット
コンサルタント 小林 春佳

1. 脳科学の経営施策(生産性)への貢献可能性の拡大

 海外ではここ数年、人事分野へ脳科学や心理学、行動科学の知見を応用することに注目が集まっている。例えば、アメリカでは2007年から「NeuroLeadership Summit」が開催され、2017年のサミットでは144カ国622人が参加した1。また、ASTD(米国人財開発機構)国際大会でも近年は、神経科学・認知心理学に関連するセッションが設けられている(例:習慣行動の変化に関する神経科学、心理的安全(心理的バイアスの理解)の構築、目的の神経科学(動機付け・エンゲイジメント)等)2

 すでに脳科学や心理学、行動科学の知見を活かした人事制度を導入している企業もある。アメリカ最大の衣料品の小売店であるGAPでは、2014年に新たなパフォーマンスマネジメント制度としてGPS(Grow(成長する)/Perform(実行する)/ Succeed(成功する))という仕組みを導入するにあたり、Growth Mindset(成長は経験や努力によって向上できるという心理学の知見)の考え方を基盤として、成果を評価するのではなく「成果のプロセス」や「取り組む姿勢」を評価することで従業員の成長を促進、結果的にパフォーマンス向上を目指している3。また、日用品大手のユニリーバ・ジャパンでは、ゲーム選考を採用し、認知科学の知見に基づいた質問を用いて性格や能力の傾向を測って採用に活かしている4。さらにデジタル面接プラットフォームHireVue5で採用面接をウェブ上で行い、撮影した動画から面接者の行動を分析(うつむいている、笑顔で話せている等)、入社後のパフォーマンスを予測し、採用時の参考としている。

 なぜ、このように脳科学や心理学、行動科学的観点から人事制度を考えなければならないのであろうか。1990年代にヨーロッパの医師による「多くの臨床行為が科学的根拠に基づいていないためランダム化比較試験(対象を実験群と統制群に無作為に割付けて行う実験)が重要である」という主張から、「Evidence based medicine(科学的根拠に基づいた医療)」という言葉が使われるようになった。さらに、「Evidence based(科学的根拠に基づいた)」という考え方は、社会福祉、教育など各分野に拡大された6。日本でも政府の行政改革として2017年8月に客観的な証拠に基づく政策立案を推奨する「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)推進委員会」が開かれ、統計・データの利用促進に向けて議論が進められている7

 このような流れを考慮すれば、当然、現在の働き方改革に伴う各種の施策も「Evidenc based(科学的根拠に基づく)」の考え方で推進していくべきである。しかし、実際にはこのような施策を他社に倣って導入したところで、その効果を計測し、改善につなげている企業はどのくらいあるのであろう。例えば、毎週のノー残業デーの効果を導入前後の労働時間や心身的負荷で計測するなど、実際に行っている企業はどのくらいあるのであろう。

 さらに、これからは、単なる相関関係ではなく、施策導入によってなぜ効果が上がったのか、その因果関係にまで目を向け、より細かく一人ひとりの働き方の改善に結びつける人材管理、いわば「Evidenced based IHRM(Individual Human Resource Management)」が求められる。

2. 組織・個人のパフォーマンスに影響を与える様々な要因

 そこで、次に、組織・個人のパフォーマンスに影響を与える様々な科学研究事例を紹介したい。

● 成功報酬とパフォーマンスの関係

 カリフォルニア大学の研究チームは、被験者にモータースキルタスクを行わせ、成功した場合5ドル~100ドルの報酬を被験者に支払う実験を行った。なお、この際の脳活動をf-MRIを用いて計測した。

 結果は、高難度のタスクで中程度の報酬が設定された場合はパフォーマンスが向上した。しかし、高難度のタスクで最高額の報酬が設定された場合はパフォーマンスが低下した。この行動実験の結果とf-MRIの計測結果を合わせて解析すると、腹側線条体(報酬に関わる脳部位)の報酬額への感度と損失忌避(失敗=損失が怖くなる)の間に負の相関があることが明らかになった。つまり、成功報酬額を高額に設定するほど、損失忌避に繋がり、結果パフォーマンスが低下することが示唆された8

● 自己能力知覚の性差

 アメリカの医学部の学生68人(男性34人/女性34人)を対象に外科手術の実習後、自身の能力を11項目で評価させた。また同時に指導教官にも同項目で学生の評価を行なわせた。

 学生の自己評価と指導教官の評価を比較した結果、指導教官評価は、男性の学生よりも女性の学生のほうが高かった。しかし、女性の学生の自己評価は、指導教官に比べ有意に過小評価であった。一方で男性の学生の自己評価は、指導教官に比べ過大評価する傾向があった9。このことから、男性は自己能力を過剰に評価し、女性は自己能力を過小に評価する傾向があることが推測された(もちろん、性差以外に個人差、得手不得手等もあり、状況によって結果が異なることは考えられる)。

● 成功できる自信とワーク・エンゲイジメント

 イタリアの通信サービス会社の従業員を対象に行った調査では、自己効力感(self-efficacy: 自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できる可能性を認知すること)が高いと自己のワーク・エンゲイジメント(「活力」「熱意」「没頭」によって特徴づけられる、仕事に関連するポジティブで充実した精神状態のこと)を高めることに加え、状況の肯定的な認識(上司・同僚・経営者への肯定的な認識)も高めることが示唆された。つまり、「できる」という信念は職場の状況に対する肯定的な認識にも繋がることが新たにわかった10

● 仕事とプライベートの相互充実

 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)やワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の葛藤)に加え、2000年以降、仕事と仕事以外の生活が相互に高め合う関係(ワーク・ファミリー・エンリッチメント、またはポジティブスピルオーバー)をテーマにした研究について関心が高まってきた11。2008年に北里大学の島津教授らのグループが共働き夫婦を対象とした研究では、仕事の負荷が高いとワーク・ライフ・バランスの悪化に繋がり、夫婦関係の質の低下を通して、パートナーの健康の悪化に繋がることが示唆された。一方、父親のワーク・エンゲイジメントが高いとその子どもの情緒や行動にポジティブな影響を与えることも明らかになった12

3. 個人に着目した経時的かつ実時間計測によるワーク・エンゲイジメント向上要因の推定

 2章で示した通り様々な研究がある中で、我々が今回着目したのはワーク・エンゲイジメントである。近年、社会経済状況(サービス業の増加、裁量労働制の導入、情報技術の進歩、共働き世帯の増加など)の変化に伴い、従業員の不調への対応やその予防活動(メンタルヘルス)にとどまらず、個人や組織の活性化を視野にいれた対策を行うことが重要になってきている13。ワーク・エンゲイジメントが高い従業員は、心身が健康で活力があふれ、仕事に積極的に関与し、生産性も高いことが明らかになっている14。さらに米国の調査によると、従業員のエンゲイジメントとパフォーマンスに相関が認められ、従業員のエンゲイジメントが高い企業は、低い企業に比べると収益性21%、離職率59%、無断欠勤41%の差があることが明らかになったことなどから、ワーク・エンゲイジメントへの注目が集まっている15

 一方で、これまでの研究は単一時点かつ個人間での共通要因についてであり、日々のエンゲイジメントの変化要因やその個人差については明らかにされていなかった。これらの課題は、実際の職場で日々の心身的変容や個人差に対応した適切な介入などを目指していく上で大きな障壁になると考えられる。また、「あなたはどのような理由で仕事へのエンゲイジメントが上がると思いますか?」というような直接的な質問に対して、即座に回答することは難しい。なぜならば、本人が意識していない無自覚的な要因については本人自身が評価できないからである。

 そこで、我々は、このような課題を解決するために、記憶に頼ることなくリアルタイムにワーク・エンゲイジメントとその他の状況(上司から評価・裁量・仕事量・職場環境・プライベートの満足度・気分など)を取得し、従業員個人のワーク・エンゲイジメントの変容要因を評価することを目指した16

【実験概要】

 実験参加者は、スマートフォンを経由し、現在のワーク・エンゲイジメントの強度と他の状況(上司から評価・裁量・仕事量・職場環境・プライベートの満足度・気分など)を回答する。また、ワーク・エンゲイジメントが変化したと感じるタイミングでも回答する。回答期間は、約2週間、平日の出勤直後、昼休憩、退勤直前の1日3回のタイミングで行う。この研究には、大手サービス業と弊社の従業員合わせて35人が参加した。

【実験結果】

①ワーク・エンゲイジメント経時変動の観察
 ワーク・エンゲイジメントは、曜日ごとに変動していることが確認できた。また、変動の大きさには個人差が見受けられた。(図1参考)

ワーク・エンゲイジメント得点

図1:ワーク・エンゲイジメント経時変動

図1:ワーク・エンゲイジメント経時変動
黒線が全参加者の平均値/その他の線が一人ひとりのその曜日の平均値


②ワーク・エンゲイジメント変動要因の個人差
 ワーク・エンゲイジメント3指標(活力・熱意・没頭)の総合得点(30点満点)を目的変数に、その他の状況(全17指標)を予測因子として、機械学習の一手法であるスパースモデリング(ワイドデータに普遍的に内在するスパース性を利用することにより、最大限の情報を効率よく抽出することで目的変数を予測する技術の総称)を実施し、一人ひとりの「ワーク・エンゲイジメントモデル」の重み係数(ワーク・エンゲイジメントの変化を予測する強さ)を算出した。
 図2は、各行が実験参加者一人ひとりを示し、ワーク・エンゲイジメントと正の相関が強い指標ほど赤~茶色で図示、ワーク・エンゲイジメントと負の相関が強い指標ほど青色で図示されている。図を見ると一人ひとりワーク・エンゲイジメントと相関する指標は、様々であることがわかる。例えば、成長機会(上司に評価されている)を感じるとワーク・エンゲイジメントが高くなる人もいれば、プライベートの満足度が下がるとワーク・エンゲイジメントが高くなる人もいる。

図2:ワーク・エンゲイジメントモデルの被験者ごとの係数

図2:ワーク・エンゲイジメントモデルの被験者ごとの係数

各行は被験者一人ひとりを示す ※WEmean:ワーク・エンゲイジメントの平均値 ※WEstd:ワーク・エンゲイジメントの標準偏差

 また、参加者全体で分析した場合、ワーク・エンゲイジメントと正に相関する指標は、「成長機会(上司から評価を受けていると感じること)」や「ワーク(仕事の満足度)」「量(仕事の要求量が多いと感じること)」「活気(元気である)」であった。逆に「イライラ」は、ワーク・エンゲイジメントと負の相関を示した。(図3)

図3:ワーク・エンゲイジメントモデル係数の全被験者の平均

図3:ワーク・エンゲイジメントモデル係数の全被験者の平均


③ワーク・エンゲイジメントタイプ(クラスタ)
 一人ひとりのモデル係数にワーク・エンゲイジメントの平均値及び標準偏差を加え、階層クラスタリング(ウォード連結・相関距離)を実施した。個人ごとに異なる「ワーク・エンゲイジメントの変化に影響を与える要因」についてパターンの類似性でいくつかのまとまりを見出すことができ、およそ5クラスタでの存在が明らかになった。(図4)

図4:ワーク・エンゲイジメントクラスタごとの係数

図4:ワーク・エンゲイジメントクラスタごとの係数


 各クラスタについて便宜的にタイプ名をつけて特徴を解説すると以下のような形となる。

  • クラスタ1(気分屋ハイパフォーマー):WE(ワーク・エンゲイジメント)は高いが、イライラするなど気分の変動で下がりやすいタイプ。
  • クラスタ2(ハイパーハイパフォーマー):安定してWEが高い。上司に評価されたり仕事の量が増えたりするとさらに上がる。
  • クラスタ3(流されやすい低空飛行タイプ):上司の評価・裁量・職場の温湿度的環境などがやる気に影響するもののWEは低い。
  • クラスタ4(プライベート優先低空飛行):私生活が楽しいと仕事のやる気が下がる。総じてWEが低い。
  • クラスタ5(環境依存のハイパフォーマー):基本的にやる気があるが職場の作業環境(騒音、温度、明るさ、換気等)でやる気が下がりやすい。

④ワーク・エンゲイジメントタイプ(クラスタ)ごとの特性
 5クラスタのキャリア志向、ワーク・ライフ・バランスの平均値を算出した。

図5:クラスタ別キャリア志向

図5:クラスタ別キャリア志向


 ワーク・エンゲイジメントが高いクラスタ1(気分屋ハイパフォーマー)、クラスタ2(ハイパーハイパフォーマー)は、共通してキャリア志向に関する設問の平均値が高い。一方でワーク・エンゲイジメントが低いクラスタ3(流されやすい低空飛行タイプ)、クラスタ4(プライベート優先低空飛行)は、将来従事したい(理想の)職業をはっきりさせているのスコアは高いが、将来に向けた具体的な計画を立てることや努力に対してはスコアが低かった。同じくワーク・エンゲイジメントが低いクラスタ5(環境依存のハイパフォーマー)は、クラスタ3、4と異なり将来従事したい(理想の)職業をはっきりさせているのスコアが低い。このように解析結果からクラスタ別の異なる特性を把握することができる。(図5)

図6:クラスタ別ワーク・ライフ・バランス

図6:クラスタ別ワーク・ライフ・バランス


 他にも、仕事と仕事以外の満足度では、ワーク・エンゲイジメントが高いクラスタ1(気分屋ハイパフォーマー)とクラスタ2(ハイパーハイパフォーマー)で対称的な結果であった。また、ワーク・エンゲイジメントが低いクラスタ3(流されやすい低空飛行タイプ)は、5クラスタの中で最も仕事と仕事以外の満足度が低く、仕事が忙しいことによって、家族の時間やプライベートな時間が十分に取れていないと感じ、家事・育児やプライベートが忙しく仕事への意欲が低下するスコアが高いといった特性を把握することができた。(図6)

4. 今後の取り組み

 今回の実験を通して、一人ひとりのワーク・エンゲイジメントの経時的な変化を捉え、個人モデルが構築できたことから有効な実験であることが確認できた。今後はこの技術を応用したIHRMソリューションを開発し、実現場での活用を目指す。なお、IHRMソリューション開発を検討する中で、以下の課題が挙げられる。

①ワーク・エンゲイジメント以外の従業員のパフォーマンス指標の洗い出し
 ワーク・エンゲイジメントは、従業員個人の心身が健康で活力にあふれ、仕事に積極的に関与し、生産性も高まることが明らかになっており、労働者のパフォーマンスに影響を与える1指標である。ワーク・エンゲイジメントに留まらず、従業員のパフォーマンスに影響を与える指標を洗い出し、複合的に用いることで従業員のパフォーマンスを正確に捉えることができると考える。

②人間の特性を加えることによる個人の理解や属性の詳細化
 従業員一人ひとりのワーク・エンゲイジメントの変化を捉えることで、経営層は適切なタイミング(エンゲイジメント低下時など)に従業員へ施策を打つことが可能となる。しかしながら、施策内容は一律的に同じものではなく、従業員一人ひとり、あるいはチーム・部署ごとに工夫が必要となる。例えば、楽観主義者と防衛的悲観主義者(過去の結果はポジティブに捉えるが将来をネガティブに捉える人)に同じ課題を実施させた場合、課題実施前の行動の違いが成績に影響を与えることが示唆された。楽観主義者は、課題の前に気晴らしをさせることで成績が上がるが、防衛的悲観主義者は、課題の前に気晴らしをさせることで逆に成績が下がった。一方で課題実施前に両者に十分な課題検討時間を与えると楽観主義者は、成績が下がり、防衛的悲観主義者は成績が上がった17 18。人間の特性を考慮しない施策や声がけは、逆に従業員のパフォーマンス低下の原因になってしまう可能性がある。つまり、ワーク・エンゲイジメントの変化、すなわち施策を実施するタイミングに加え、人間の特性を理解し、細分化することで従業員に合った効果的な施策を打つことが可能となる。

③従業員への介入に資するパフォーマンス向上要因のブレイクダウン
 図2を見るとワーク・エンゲイジメントと共に変動する要因は、個々様々であることがわかる。例えば活気(元気)があると感じるとワーク・エンゲイジメントが向上する人や、家族との関係が悪化するとワーク・エンゲイジメントが低下する人に対して、経営層はどのような施策を打てるのか。例えば活気(元気)がある状態の意味が眠さやだるさがなく1日中活動できる状態の場合もあれば、イライラしない状態、活力に満ち溢れている状態など様々なケースが考えられ、打つべき施策も異なる。要因をブレイクダウンすることによって、経営層が従業員に対してより適切な施策を打つことが可能となる。

 NTTデータ経営研究所が事務局を務める応用脳科学コンソーシアムの人間情報研究会では、以上の課題を解決し、実用化に向けた有効性の検証を複数社と実施する予定である。本研究会では、上に述べた課題解決に向けた検討会や実際に参画企業の従業員を対象とした実験を通して、実用化に向けたディスカッションを行い、翌年度以降に参画企業と共同事業化を目指している。

 本研究会は、以下の3つの点に着目して活動を行うことが特徴である。まず、人間の特性に着目している点である。NTTデータ経営研究所では、2016年度から「人間の本質に迫る」ことを目的として、約4.5万人のDeep Dataを収集する人間情報データベースを脳科学・認知心理学・医学・経済学などの研究者とともに開発している19。本研究会においても、人間特性の把握にこの人間情報データベースで用いられている設問の一部を活用することで本人も自覚していない人間の本質の理解を目指す。

 次に、介入に資するワーク要因に着目している点である。本研究会では、個人単位で介入可能な具体的な要因(例えば、上司からの評価を受けていると感じることや仕事量や職場の環境など)に落とし込むことにより、従業員一人ひとりへ施策の実施が行えることはもちろんのこと、個人差を考慮したチーム・部署単位の分析と施策の実施を目指す。

 最後にライフ要因に着目している点である。産業構造の変化(製造業からサービス業へ)、働き方の多様化、情報技術の進歩などによって、いつでもどこでも”仕事ができる”ようになった中で「いかに働くか」に注目した対策のほかに「いかに休むか」に注目した対策も重要となっている13。最近の研究では、リカバリー経験(仕事によって引き起こされたストレス反応や、それらの体験によって消費された心理社会的資源を元の水準に回復させるための活動)とワーク・エンゲイジメントとの関係20や家族の支援を受けることで仕事と家庭が相互に充実すること21などが明らかになっている。経営層から従業員の生活への施策は難しいと考えられがちだが、例えば企業から従業員へ提供している福利厚生制度などを活用することで従業員の生活へ施策が打てるのではないかと期待している。

 以上3つの点に着目することで、従業員一人ひとりの特性、個人差を考慮したチーム・部署の特性を把握することが可能となる。さらに、本研究会の成果は、介入に資する要因に着目しているため現場での実行可能な施策の検討材料として活用することができる。

 また、オープンイノベーションによる脳科学の産業応用を推進している応用脳科学コンソーシアムで研究会を実施することで、様々な業種の企業が異なる視点を持って本研究会に参画することが期待される。研究会では、様々な業種の企業同士の活発な意見交換やPoC(Proof of Concept)を通して、新しい事業の立ち上げを目指す。

 本稿をきっかけに人事分野で「Evidenced based IHRM(Individual Human Resource Management)」の考え方が浸透し、「Evidenced based(科学的根拠に基づく)」の新しい施策が生まれ、労働者一人ひとりの働き方に寄与し、企業の経営施策(生産性)の貢献に繋がることを望む。


応用脳科学コンソーシアム: http://www.keieiken.co.jp/can/
人間情報研究会についてのお問い合わせ:



  1. NeuroLeadership Summit 2017 : https://summit.neuroleadership.com/2017-program-lp/
  2. ADS 2018 Conferences : https://atd2018.mapyourshow.com/7_0/sessions/
  3. MANA-Biz(マナビズ). 最新の脳科学とモチベーション理論を応用した人事評価制度.(2018) :
    http://www.mana-biz.net/2017/07/post-241.php
  4. College Cafe. ユニリーバ・ジャパン人事本部長インタビュー.(2017) :
    http://college.nikkei.co.jp/article/104472915.html
  5. HireVue デジタル面接プラットホーム: https://www.hirevue.com/
  6. 惣脇宏. 英国におけるエビデンスに基づく教育政策の展開, 国立教育政策研究所紀要 第139集 平成22年3月
  7. 政府の行政改革HP. : https://www.gyoukaku.go.jp/index.html
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