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ソーシャルネットワークサービスの近未来構図2014

(2014年5月)

パートナー 山下長幸


ソーシャルネットワークサービスの普及による経済社会へのインパクト

これまで経済社会全体に幅広く情報発信できるのは、大手テレビ局や大手新聞社などのマスコミを通じて著名人、専門家、記者など一部の限られた人たちがメインであり、マスコミサイドから生活者への一方通行の情報発信になりがちであった。

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、人と人のつながりを促進するコミュニティ型Webサービスで、2002年にサービスを開始した米国のFriendsterが2004年に数百万人規模となり新しいネットコミュニティの形態として注目を集め、その後2004年から2006年に現在の有力なプレーヤーであるFacebook、Twitter、LinkedIn、Myspace、(以上、米国)、mixi、GREE、DeNA(以上、日本)などが続々と市場参入した。(図表1)

図表1:主要ソーシャルネットワーキングサービスの開始時期・変遷

図表1:主要ソーシャルネットワーキングサービスの開始時期・変遷

(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)

これらのSNS登録ユーザーである生活者は、個人個人のさまざまな生活体験や思い(コンテンツ)を発信し、投稿された情報は、人から人へ日常的に伝わりシェアされるなど、一般の生活者でも社会に対して情報発信ができる能動的な存在となった。このような場において、共感を呼ぶコンテンツの拡散スピードは非常に速い。まさにSNSはクモの巣状(Web)のような形での情報拡散・情報共有のサービス基盤の役割を果たしている。

SNSの普及で普通の生活者が経済社会全体に対して情報を発信し、その情報を共有する状況が出現したことにより、商品開発・販売促進・採用活動など各種の企業活動にも大きな影響を与えることになった。これまでのような、企業から生活者への一方通行のマーケティングコミュニケーションではなく、今後は企業も生活者との双方向のコミュニケーションに本格的に取り組む事が必須となるであろう。

企業においては、SNSの機能を企業内コミュニケーションに活用し始めるところも増えてきた。これまでの企業内コミュニケーションにおいては、組織間の意思疎通がなかなか円滑に取れないという課題が多く発生している。いわゆる「組織の壁」の課題である。企業内SNSの導入により、このような課題を克服し組織間や経営層と若手社員など企業内のさまざまな部署や階層間のコミュニケーションを活性化して、企業の更なる総合力を発揮することができるようにする、という目的である。

このように、SNSは経済社会全体におけるコミュニケーション構造の進化に大きな影響を与えており、これは一過性の流行ではなく、社会経済に深く根付いていくものとなるであろう。個別SNSブランドの栄枯盛衰は今後も続くであろうが、経済社会に根付いたSNS機能の進化・普及は続いていくものと考えられる。

ソーシャルネットワークサービス進化の方向性

米国発祥のFacebookや日本発祥のmixiなどが市場参入した2005年前後におけるコンピューティング端末の主流はデスクトップ型などのパーソナルコンピュター(PC)であり、これらのSNSもPCでの利用を前提に設計開発された。このような状況のもと、米国アップル社より、2007年に発売されたスマートフォン「iPhone」、2010年に発売されたタブレット型コンピューター「iPad」の世界的人気・普及により、コンピューティング端末の多様化が一気に進行した。このようなコンピューティング端末の進化・普及に適合するよう、今後、SNSも進化・普及を遂げていくものと考えられる。

【1-1】スマートフォン普及によるSNSの進化

デスクトップパソコンは、ワープロ、表計算などの文書処理、インターネットの利用、卓上印刷、キーボードとマウスを活用した操作などを主として机上の情報処理に利用するものである。これに対して、スマートフォンは、端末を手軽に身につけて常に持ち歩け、タッチパネルで簡単に操作ができ、人の全生活空間における活動を支援するなど、広大な実空間において多様な領域で情報処理に利用が可能である。

このようにスマートフォンによるモバイルコンピューティングは、PCにおけるデスクトップコンピューティングという限定された枠組みを大きく超えており、モバイルコンピューティングには大きな可能性が感じられる。

【1-2】スマートフォンを活用したソーシャルネットワーキングサービス

スマートフォンを利用したソーシャルネットワーキングには、その場、その時に投稿できること、少しの空き時間に活用できること、自分の居場所を知らせることができること、写真の投稿が容易、タッチ操作で素早く閲覧、更新できるなどの強みがある。このようにスマートフォンとソーシャルネットワーキングの親和性は極めて高く、スマートフォンの普及・進化により、ソーシャルメディアの影響力も強まるものと想定される。

企業の視点からは、スマートフォンは、個人が持ち運ぶ生活インフラとして高占有率のマーケティング媒体であり、口コミマーケティングなどの各種マーケティングへ活用可能となる。

【1-3】スマートフォンにおける位置情報コンテンツを活用したジオソーシャルネットワーキングサービス

スマートフォンには、GPS(Global Positioning System)やWi-Fi(Wireless Fidelity)という無線LANアクセスにおける位置情報把握機能が備わっているケースが多い。

バーチャル世界と現実世界のブリッジングの要になるのが位置情報であり、スマートフォンは現実世界にバーチャル世界情報の紐づけを容易にするものである。加えて、人間というものは、移動すること、その現場に行くこと、その場で人とつながること・協力しあうことに楽しみを感じるもので、このような人間の自然な感情に位置情報コンテンツのポイントがある。

日本では従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)の頃から位置情報ゲームを主としてGPS利用コンテンツアプリが発達してきた。

一方、スマートフォンが普及した米国では、ジオソーシャルネットワーキングというサービスが産み出された。日本においては、位置情報はゲーム性がベースにあるが、米国においては、位置情報をソーシャルネットワーキングに活用しているところが違いとなっている。ジオソーシャルネットワーキングにはさまざまなパターンがあるが、一例として以下のようなものがある。

(1)友人たちに現在どこにいるかを知らせる

(2)位置情報を活用して日常のコミュニケーションを活性化(ゲームを楽しむよりコミュニケーションにサービスの主軸)

(3)場所周辺の関連情報表示

スマートフォンにおける位置情報コンテンツを活用したジオマーケティング施策として、リアル店舗への来店誘導などに多く活用されている。

【2】電子書籍タブレット端末普及によるSNSの進化

近年、何度か「今年は電子書籍元年」と言われてきたが、スマートフォンやiPadなどのタブレット端末、Kindleなどの電子書籍専用端末の普及に伴い電子書籍市場が活況を呈しつつある。インプレスビジネスメディアの調査によると、日本では従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)経由の電子書籍の売り上げは2010年度には572億円に達するなどそれなりの市場規模に達していたが、スマートフォン・タブレット端末経由の電子書籍市場規模は2017年度には2,310億円に達し、2012年度から2017年度における日本の電子書籍市場規模の年平均成長率は26.8%と高度成長する予測となっている。

電子書籍タブレット端末(電子書籍閲覧アプリ)には、読者が電子書籍タブレット端末で読んでいる電子書籍の気に入った一節などをマーキングすると、それが同じ電子書籍を読んでいる他のユーザーにも表示され、そこに書き込まれた読書感想などを他の読者と共有する機能や、SNSに自動的に投稿する機能などが装備されている。このような機能を活用した読書が「ソーシャルリーディング」と称されている。これまでの紙の書籍の読書体験では簡単にできなかった一節ごとの読書感想の共有などがソーシャルリーディング機能により実現されることとなった。読書体験におけるソーシャル化の動きと言える。

出版社としても、今後は、電子書籍の強みを活かすような機能を付加した書籍の企画編集力を向上させていくべきであろう。これまでの電子書籍は単に紙の書籍を電子端末ディスプレイで閲覧するという単純なものも多かったが、電子デ-タならではのハイパーリンク機能を装備した書籍企画編集をすべきである。単に辞書機能を付加するだけでなく、単語に関連するリンク先のサイトにすぐにアクセスできて内容の理解を深めたり、ソーシャルリーディング機能を強化したり、また、ネット販売サイトとのリンクを強化したりするなどさまざまな機能付加が考えられる。

また、出版社としては、電子書籍の特性に合った広告宣伝力の強化が必要であろう。紙の書籍の宣伝広告方法は、長年のノウハウが蓄積されてきたが、電子書籍の場合、読者がネットユーザーであったり、タブレット端末で読書したりすることが多いものと想定される。そのような状況のもとで、どのような広告宣伝が有効なのかは、今後ノウハウを積み上げていく必要があろう。例えばソーシャルリーディングが進化・普及をした状況のもとでのソーシャルメディアマーケティングのノウハウなどは今後開発していく必要があろう。

【3】スマートテレビ普及によるSNSの進化

近年、家電製品に情報通信技術が搭載された「スマート家電」が注目されている。その中でテレビのスマート化を進める「スマートテレビ」も製品開発・市場投入が進んでいる。スマートテレビの主要機能としては、以下のようなものが挙げられる。

(1)オンデマンド動画コンテンツ視聴

  • テレビをインターネットに接続することで、動画コンテンツをオンデマンドで視聴することができるようになる。

(2)テレビアプリダウンロード

  • スマートフォンにさまざまなアプリをダウンロードして利用することができるように、テレビでも大型ディスプレイの特徴を活かせるようなテレビアプリをダウンロードして利用することができるようになる。

(3)テレビ電話機能

  • テレビに通信回線を接続することにより大型ディスプレイの特徴を活かせるようなテレビ電話機能を利用することができるようになる。

(4)コンピューティング端末との連携

  • スマートテレビで検索した動画をスマートフォンやタブレット端末で視 聴したり、タブレット端末で検索したテーマに関連するテレビコンテンツをテレビで視聴する事ができるようになる。

(5)各種スマート家電のハブ機能

  • 今後スマート化が想定されている冷蔵庫や洗濯機などの各種家電をテレビ画面から制御したり、テレビの料理番組からダウンロードしたレシピを冷蔵庫に転送して調理メニューに加えたりすることができるようになる。

これらの各種スマートテレビ機能にSNS機能が加わり、「ソーシャルビューイング」が進化・普及することが想定される。番組を視聴しながら番組に関するコメントを発信したり、全国で視聴している人たちと番組の感想を共有したりすることができるようになる訳である。これまでテレビ番組視聴は家族など少人数の範囲でしか楽しむことができなかったが、SNS機能を利用することにより多くのSNS登録視聴者とコミュニケーションを取ることが可能となる。

このような動きのなかでテレビ番組制作サイドとしても、ソーシャルビューイングを前提としたテレビ番組制作をする企画力が求められるであろう。

【4】AR技術の発展普及によるSNSの進化

現実拡張と訳されるAR(Augmented Reality)技術とは、現実環境がベースにあり、そこにコンピュータグラフィックス映像や文字情報を付加する技術である。

2012年5月4日、米国グーグルはGoogle+にて拡張現実メガネ(ARメガネ)の計画を正式発表し、プロトタイプの映像を公開した。拡張現実ARメガネを装着すると、口頭の音声指示内容に沿ってメガネを通して現実風景の中にさまざまな情報が表示される。例えば、天気予報を見たいとする音声に反応して空に天気予報が表示され、また、音声による目的地までのナビゲーション指示に反応して、現在地点から目的地までのナビゲーションを現実風景の中に表示する。拡張現実ARメガネには、スピーカーが内蔵され、モバイル電話、動画ライブチャットも可能である。PCやスマートフォンに続くインターネットデバイスとして、グーグルはこのようなAR(Augmented Reality)を活用したウエアラブル端末を進化させることに力を入れている。このようなAR端末は、スマートフォンよりも各種情報が自然な視覚の範囲に提示されるので、将来的にはスマートフォンを置き換えていく予感がする。

これまでのインターネットの進化・普及と同様に、ARの世界でも、AR端末やARブラウザの進化・普及に伴い、各種アプリケーションやネットワーキングサービスが進化・普及することが想定される。デスクトップパソコンのような端末ビジネスレイヤーに相当するものとして、ARグラスやARカーナビゲーションなど、モバイルAR表示デバイスの提供がある。AR活用サービスレイヤーとしては、デスクトップパソコンの世界と同様に、AR検索ビジネス、AR企業サイト、AR広告サービス、ARソーシャルネットワーキングサービスなどが考えられる。SNSはARの世界でも重要なアプリケーションとしてサービスが提供されるであろう。

現状、スマートフォンがデスクトップパソコンをしのぐようなかたちで進化・普及をしているが、それがゴールではないことの1つとして、このようなARデバイスの開発動向を見ると分かるのではないだろうか。デスクトップコンピュータの普及期において、WindowsOSがデスクトップコンピュータ業界を席巻したかに見えた。また、インターネットの進化につれ、ポータルサイト企業や検索サイト企業がデスクトップコンピュータ・インターネット業界を席巻したかに見えた。さらに、現在は、スマートフォンの世界的な普及により、新たな業界構造が形成されようとしている。しかし、それで終わりではないようである。さらにその後、AR技術やARデバイスの進化・普及による世界が控えているのである。そしてその先もきっとあるのであろう。技術の進化はまだまだすごいものがある。

コンピューティング技術の進化・普及状況と主要プレーヤーの変遷

先進国市場における主力のコンピューティングの技術は、1960年代からの大型汎用コンピュータによるメインフレームコンピューティング、1980年代からのパーソナルコンピュータ(PC)によるデスクトップコンピューティング、1990年代からのPCによるインターネットコンピューティング、2000年代からのPCによるソーシャルネットワークコンピューティング、2010年代からのスマートフォンによるモバイルコンピューティングと近年は10年単位で変遷を遂げてきた。2000年代からのソーシャルネットワークコンピューティングは、Facebook、Twitter、mixi、GREEなどが活躍してきた。

それに応じて、主要プレーヤーの変遷も起きてきた。1960年代からのメインフレームコンピューティングは、IBM、日立、富士通などの大型汎用機メーカーが活躍した。1980年代からのPCによるデスクトップコンピューティングは、PCメーカーを抑えて、PCのOSメーカーであるマイクロソフトが市場を席巻した。1990年代からのPCによるインターネットコンピューティングは、検索ポータルサイトであるGoogleやYahoo!、ECサイト運営企業であるAmazonや楽天などが活躍してきた。

モバイルコンピューティングに関しては、米国アップル社によるスマートフォン「iPhone」が、米国で2007年6月、日本では2008年7月に発売され、日米でスマートフォンブームが起きた。米国での発売から5年弱の2012年3月末時点での世界全体への累積出荷台数は2億1,600万台に達している。

日本では、それまで従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)がモバイルフォン市場のほとんどを占めていたが、iPhone発売以降、フィーチャーフォンからスマートフォンへの代替が急速に起きるものと予想されている。

それではモバイルコンピューティングの次は何がくるのであろうか。筆者はウエアラブルコンピューティング端末ではないかと考えている。AR技術を搭載したグーグルグラスのようなグラス型のみならず、スマートウォッチのような時計型など多様な形態のウエアラブル機器が開発されていくことが想定され、SNSはその主要機能の1つとしてさまざまな形態で発展を遂げるのではないかと考えている。SNSの進化・普及はまだまだ目が離せないものがある。(図表2)

図表2:コンピューティング技術の進化・普及状況と主要プレーヤーの変遷

図表2:コンピューティング技術の進化・普及状況と主要プレーヤーの変遷

(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)