NTT DATA Global IT Innovator
NTTデータ経営研究所
English  お問い合わせ  サイトマップ
戻る サイト内検索
戻る

ワークスタイル変革シリーズ~これからの女性活躍推進の在り方について

「働き方に関する調査2013年11月」より(2014年4月)

グループ事業推進センター 
シニアマネージャー 加藤 真由美

 

はじめに

2013年4月、安倍首相は経済界に対し、「指導的地位に女性が占める割合が2020年で30%」を要請し、現政権下の「成長戦略」では、「女性の活躍推進」は「多様な働き方の実現」「高齢者の活躍推進」「グローバル化等に対応する人材力の強化」とともに成長戦略の基本的な考え方に位置づけられている。
  加えて、内閣府「男女共同参画白書 平成25年度版」の冒頭で、「成長戦略の中核である女性の活躍に向けて」と特集されている。
  そこで、本稿において、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する「NTTコム リサーチ」(旧gooリサーチ)登録モニターを対象に、2013年11月に実施した「働き方に関する調査」から、女性の職業観をみながら、女性活躍推進の在り方を考察していく。

調査の概要

調査概要は、以下のとおりである。
http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/131212/index2.html

女性社員の活躍度に対する意識

「女性社員が活躍していると感じる割合」は、「女性社員の昇進意欲の低さ」、「女性社員の体力的な問題」、「女性社員の出産育児での退職による損失」を感じている割合よりも、少ない結果となっている。
 また、これらの「女性社員の意欲・体力・ライフイベントによる損失」について、男性社員と女性社員で感じる程度に差は少ないが、「女性社員が活躍していると感じている程度」は、男女で10ポイント以上の差がある。
 これらの結果から、女性社員自身が女性の活躍を認めるよりも、男性社員が女性社員の活躍を認める方が厳しいと言うことができる。評価者の多くは、男性社員である現状を考えると、よほど目立った成果を出さないと評価されにくいことが表れている。また、会社が男女で同じ評価基準を提示しているにもかかわらず、多くの職場では業務アサインの面で公平とは言い難いケースも散見されているのも現状である。
 育児介護休業法や改正男女雇用均等法などにより、ハード面(制度面)では大きな変革をみせた女性活躍推進ではあるが、「女性社員は男性社員の何倍も頑張らないと認められにくい」と言われていた「男女雇用機会均等法」が施行された30年前のあの頃とソフト面(運用面)では、大きく前進しているとは言い難い状況である。

実際に、筆者は様々な企業の方と業務アサイン等について、討議する機会があるが、男性も女性も評価・処遇は同じにしていると人事部様から説明を受ける。その後で、現場の管理職にヒアリングをすると、「厳しい仕事の矢面に立たせるような仕事を女性社員にさせるわけにいかない」というコメントや、「一人ひとりの力量やポテンシャルを見ながら業務アサインを考えると、どうしても男性社員とは違ってくる」というコメントがある。さらには、「女性社員?そんなに重要な仕事はしていないと思う」と部門長に言われることが多い。
 一方で、男性社員ばかりの職場に女性社員を配属して、組織の活性化に成功し、組織の業績も向上したという好事例もある。女性社員本人の溶け込み方の上手さや前向きな姿勢が奏功しているケースであるが、お互いに成長を支援しあう組織風土が性別を問わず、業績の原動力になったことは確かなようだ。加えて、管理職が男女関係なく、部下との日々の対話を重要視していることも特徴として挙げられる。

女性社員の活躍度に対する意識についての詳細は、以下のとおりである。
「職場の女性社員の多くが活躍している」と回答した女性社員は、4割(44.2%)(「共感できる」「どちらかと言えば共感できる」を合わせて肯定評価以下、同じ)である。一方で、「活躍していない」と感じている女性社員の回答者(「職場の女性社員の多くが活躍していない」を「共感できない」「どちらかと言えば共感できない」を合わせて否定評価。)は、約半数(48.9%)に達する。

男性社員の回答者をみると、半数以上(51.3%)が「職場の女性社員の多くが活躍していない」を肯定し、「職場の女性社員の多くが活躍していない」を否定する回答は、3分1(33.3%)である。

図表 1 女性社員に対する意識 女性社員の活躍度

図表 1 女性社員に対する意識 女性社員の活躍度

(出所:NTTデータ経営研究所)

「一般的に、女性社員は、男性社員に比べて体力がないので、激務に向かない」について、男女ともに約半数の回答者が否定している(女性社員回答者:52.0%、男性社員回答者:49.9%)。
 「一般的に、女性社員は昇進意欲が低いので、管理職に登用しにくい」という質問に対しては、女性社員回答者の約7割(69.0%)が否定し、男性社員回答者も6割(61.5%)が否定している。肯定回答は、女性社員回答者の16.3%、男性社員回答者の20.6%である。

 なお、「一般的に、女性社員は出産育児などで辞めてしまうので、育成することは無駄である」については、男女ともに約6割が否定している(女性社員回答者:62.0%、男性社員回答者:57.8%)。(図表 2 女性社員に対する意識~女性社員が活躍できない理由)

図表 2 女性社員に対する意識~女性社員が活躍できない理由

女性社員に対する意識 女性社員が活躍できない理由

(出所:NTTデータ経営研究所)

仕事に対する価値観とマネジメント志向

女性社員の約6割が、育児や家事を分担し、女性管理職の比率が30%以上になっていることを願っているにも関わらず、組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたい女性社員は、3割強に留まっている。
 最近では、男性社員もマネジメントをする立場で働きたくない人が増加していると言われているが、その理由をこの調査からみると、男性社員の場合はマネジメントよりもスペシャリストとして力を発揮したい人が半数以上である。一方で、女性社員は、気楽な立場で仕事をしたい人が半数以上を占めている。
 この理由を前項(女性社員の活躍度に対する意識)も含めて推察してみると、男性社員の何倍も働いてやっと認められるならば、気楽な立場で人間関係を壊さないように働くことが得策と考える女性社員も多いのではないかと推察される。なぜならば、女性社員が仕事をする上で大切に思うことは、達成感や成長実感の次に「一緒に働いている職場のメンバーと良好な関係を築けている」ことを挙げているからである。
 成長のために必要な修羅場をくぐり抜け、一心不乱に働いて職場で軋轢を生むよりも、ソコソコのパフォーマンスで人間関係を維持したいと考えるのも頷ける。

なぜ、女性社員が、一心不乱に働くと人間関係が維持できないと考えるのか。

フェイスブックCOO(最高執行責任者)であるシェリル・サンドバーグ氏は、著書「LEAN IN」や各種講演で、「男性は社会で成功すると賞賛され、尊敬される。しかし、女性が成功すると、男のような奴だ。扱いづらいと嫌われる」と語っている。
 米国がこのような現状であれば、日本のビジネスの現場ではなおさらである。誰だって、嫌われたくない。目の前の仕事はしっかりやったとしても、目立った成果につながるモチベーションにはつなげにくい。

 参議院議員の片山さつき氏も、2013/9/4付 日本経済新聞 電子版の中で、「自分には管理職としての能力がないと考えている女性も多い。女性は日常のあらゆる場面で、普段仲よくしている男性の先輩、同僚、後輩たちから、悪意なくさりげなく、無邪気に、そして頻繁に「やっぱりオレ、女の上司はイヤだなあ」という一言を聞かされている。昇進さえ望まなければ、職場の仲間と摩擦なく人間関係を維持できるのに、昇進したとたん、嫌われ者になるのはゴメンだというのが、「能力がない」という言葉の裏にあるホンネだろう」と述べている。

仕事に対する価値観とマネジメント志向についての詳細は、以下のとおりである。
 10年後20年後の理想的な日本について、「部長以上の女性管理職の比率が30%以上になっているような女性活躍が進んでいる社会になっていてほしいか」と尋ねたところ、約6割(59.0%)の女性社員が肯定意見(「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」を合わせて肯定評価。以下、同じ)である。男性社員の肯定意見は、4割(44.3%)に留まっている。

次いで、「男は仕事、女は家事が死語となり、男女が共同して家事・育児・介護が担える社会になっていてほしいか」と尋ねたところ、約7割(68.3%)の女性社員が肯定しているが、男性社員は6割弱(55.9%)である。

また、「全員参加型社会(全員が生涯働ける社会)になっていてほしいか」と尋ねたところ、男女ともに回答者の約6割(女性社員:60.5%、男性社員:60.6%)が肯定している。

図表 3 10年後20年後の理想的な日本の社会

10年後20年後の理想的な日本の社会

(出所:NTTデータ経営研究所)

組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたいと回答した女性社員は、3割強(34.1%)に留まり、男性社員の同回答者の54.6%と比べると、20ポイント以上下回っている。

図表 4 組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたいか

組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたいか

(出所:NTTデータ経営研究所)

マネジメントとして働きたくない理由として、女性社員の回答者の約6割(58.5%)が、「マネジメントをする立場ではなく、気楽な立場で仕事がしたい」とし、「自分の知識や技術が活かせるスペシャリストとして力を発揮したい」と回答した人は約3割(32.3%)である。

 女性社員の回答者の約2割(21.5%)が「自分より年上の部下のマネジメントが難しい」「個性の強い人をマネジメントすることは難しい」「組織やプロジェクトに対する責任をもつことは大きな負担である」をそれぞれ挙げている。

 次いで、1割以上の女性社員の回答者が、『「異性の部下」(15.4%)、「同性の部下」(12.3%)のマネジメントが難しい』を挙げている。同項目を挙げた男性社員は、5.8%、2.8%とごく僅かである。

 つまり、組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたくない理由に、人間関係に関連する項目を挙げる女性社員は男性社員よりも多いことがわかる。

図表 5 組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたいか(上位3つを選択)

組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたいか(上位3つを選択)

(20%以上の人が理由として挙げた項目は赤字で表示している)(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)

仕事をする上で大切に思うことを尋ねたところ(上位3つを選択)、男女ともに約半数が「仕事を通じて、達成感や成長実感があること」を挙げている(女性社員:46.5%、男性社員:51.7%)。

  次に、男性社員は「仕事の中で自分の力が発揮できること」(43.1%)を挙げているが、4割(42.6%)を超える女性社員が「一緒に働く職場のメンバーと良好な関係が築けていること」を挙げている。

「報酬や昇進に対して期待がもてること」を挙げた人は、男女ともに約4分の1(女性社員:26.4%、男性社員:25.3%)であるほか、3割弱(27.9%)の女性社員が「自分で時間のコントロールできること」挙げ、2割弱(19.4%)の男性社員が「人に指図されずに、自分で決めて自主的に働けること」を挙げている。

  女性社員の特徴として、職場の人間関係を大切にし、ワーク・ライフ・バランスの確保を大切にしていることが伺える。

図表6 仕事の上で大切に思うこと(設問から上位3つまでを選択)

仕事の上で大切に思うこと(設問から上位3つまでを選択)

(20%以上の人が上位3つに挙げた項目は緑字で表示している)(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)

自己効力感と勤続意向

女性社員の3割以上が働けるうちはいつまでも働きたいと考えているが、将来(5~10年後)の業務に有効と思われる知識や技術をもっていると回答した女性社員は半数を下回り、男性社員と比べると少ない。
 現在もっている知識や技術が、5~10年後にも通用すると言えるかどうか、業界によっても違いがあるが、企業側に求められることは、会社の方向性やビジョンを示し、社員に対して必要な知識や技術を習得するための自己研鑽を求めていくことである。そうすることで、会社の能力開発の支援も機能する。
 女性活躍推進という観点からは、会社が求める社員の知識や技術は、女性社員にも貪欲に求めるべきであり、それが、機会均等になるのではないかと考えられる。女性にそこまでは求められないという遠慮はいらない。求められ、認められることが人を成長させるのではないか。

自己効力感と勤続意向についての詳細は、以下のとおりである。
 「いつまで働きたいか」と尋ねたところ、女性社員は50歳前にリタイアしたいと回答した人が1割を超える(13.2%)一方で、「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答した女性社員は3割を超え(33.3%)、男性社員の22.7%と比べると、10ポイント以上多くなっている。

図表 7 いつまで働きたいか

いつまで働きたいか

(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)

「現在の業務に必要な技術をもっているか」を尋ねたところ、女性社員回答者の約7割がもっていると答えている(「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」を合わせて肯定評価。以下、同じ)。
 一方、男性社員は現在の業務に必要な技術をもっていると回答した人は約8割(78.0%)を占めている。(同項目について、女性社員は男性社員を8.2ポイント下回っている。)

「将来(5~10年後)の業務に有効と思われる知識や技術をもっているか」という質問に対しては、有効な知識や技術をもっていると回答した女性社員は半数を下回り(47.3%)、男性社員と比べると8.9ポイント下回っている。

図表 8 自己効力感~現在の業務に必要な知識や技術を持っているか

自己効力感~現在の業務に必要な知識や技術を持っているか

(出所:NTTデータ経営研究所にて作成)

調査結果からの考察 ~普通の女性社員が生き生きと働き続けるために

少子高齢化が加速する日本において、女性の就業拡大を否定する声は少なくなり、女性活躍推進のための数値目標が掲げられたことは大きな前進である。一方で、マネジメントもスペシヤリティも十分にあるスーパーウーマンだけではなく「普通の女性社員」がそれぞれのライフスタイルや希望に応じた働き方を見いだし、かつ、力強く働き続けることが日本の経済発展に大きく寄与するものと考えられる。

しかし、本調査からは、女性社員の当事者意識の希薄さや職場の人間関係を重視し、指導的な立場で働くことで周囲との軋轢を生みたくないという気持ちがチャレンジ志向にブレーキかけている現状も浮かび上がってくる。
 10年後20年後の理想的な日本について、男性社員よりも女性社員の方が日本の持続的な経済発展を期待し、女性活躍が進んでいる社会を望んでいるにも関わらず、女性社員の半数以上が組織やプロジェクトをマネジメントする立場で働きたくないと回答していることからは、女性社員の当事者意識の希薄さを表している。

 今後一層、女性社員の割合は増えると思われる。増やしていかざるを得ない現状の中で、のんびりと長く働いてもらっても問題のない企業は良いが、そういった企業はそう多くはないだろう。

「指導的地位に女性社員が占める割合が2020年で30%」を目指す企業においては、ワーク・ライフ・バランスに配慮しつつも、女性社員も男性社員と同様に仕事の中で修羅場をくぐりぬけ、一皮むける経験を重ね、心と身体の鍛練が求められる。
 企業側も女性社員の成果に期待し、機会を与え、成果を上げたら素直に認めてほしい。そうしないと、本人ばかりでなく、後進の女性社員も正しく評価されないのであれば、軋轢を生まないように、のんびりと、周囲の人と仲良く仕事を続けた方が得策だと考える。

したがって、自己啓発の必要性とともに、女性社員には当事者意識をどうもってもらうか、企業側の中長期的な視点でのキャリアをどう描いてもらうかが重要なポイントと言える。これらは、女性社員に限定しているわけではなく、男性社員にも同じことが言える。

最後に、数値目標達成のために、資質がない女性社員にゲタを履かせてまで管理職に登用する必要はないが、指導的な立場の女性社員を増やし、多様な人材のパワーを活用したい企業は、本調査でみたように、人間関係を重要視する“女性社員をフォロー”し、“女性管理職を応援する”企業風土の醸成も大切であることを付け加えたい。