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顧客満足(CS)から顧客ロイヤルティへ(生産財を中心にCS経営を考える) 第3回

組織とマネジメントの編制について

アソシエイトパートナー  四條 亨
【第1回】 顧客満足度の再考
【第2回】 顧客接点における対応
【第3回】 組織とマネジメントの編制について
『情報未来』No.36より
注:本稿の考えは、西村(IMSC)と四條による生産財のマーケティングおよび営業マネジメントの仕組みSIMACの考えとコンサルティング実績に基づく(©1990-2005) 

今回は顧客ロイヤルティを「掛け声」に終わらせずに遂行していくために、組織とマネジメントの編制について論じていくことにする。

顧客ロイヤルティのための組織

顧客ロイヤルティを目指すには、組織やマネジメントが顧客満足指向で形成されているかという点が前提となる。顧客満足(CS:Customer Satisfaction)に取り組む際には、担当部署を設置して一任することが多いが、担当組織のハコを作っただけでは、うまく機能しないと考えている。

立ち上げ期の組織とは

あらためてCSやロイヤルティを追求していこうとするならば、その原動力となる組織を立ち上げることになる。その際、営業をはじめとする顧客接点の現場では、これまでの業務に新たな活動が加わることに抵抗感が強いため、顧客満足/ロイヤルティの意義を浸透させ、さまざまな施策を適用していくことが求められる。

実際的には、コーポレートスタッフにCS統括部署が設置され、事業部門のスタッフ機能(例えば営業企画など)と連携して、活動を具体化する形が取られることが多いようである。この形は組織的な取り組みの伝達を推進するにはよいが、筆者の経験からすると、ラインからは現場乖離のCSの取り組みとの指摘や反発を生じることが少なくない。それを防ぐために、上意下達ではなく、事業部門のラインメンバを組織的に巻き込んだ進め方をお勧めしたい。当初はタスクフォース形態であってもよい。どれだけ現場からの意見を吸い上げ、応対を通じてコミュニケーションを図っているか、がうまく立ち上げる鍵となるからである。

さらにトップマネジメントのコミットメントを通じて、組織を挙げてのポリシーをどのように定着させていくか、それに基づくコントロールをどのように行うかといった仕掛け作りは、組織の特性に応じて考えていくことになる。

安定走行期の組織とは

図表1:顧客満足・ロイヤルティの組織とマネジメント
出所:筆者作成

前回までに触れたように顧客接点は多様であり、その各々がCSやロイヤルティに直結している。この段階に入ると、顧客接点の各組織でのCS/ロイヤルティの活動が回り始めているため、CSを統括する部署はコーディネート役としての活動が中心になる。すなわち各組織での活動が部分最適にとどまらないための仕組みを作り、全社的な組織活動へと統合する役回りが求められる。例えば、他部門の顧客接点との連動を奨励するインセンティブや評価を仕掛けておくことが想定される。その際、立ち上げ期は直接的な顧客接点が中心になるのに対して、この段階では間接的な接点を持つ部門や機能が、どのように顧客に貢献するかを積極的に考えることが必要になってくる(図表1)。

支援部門の顧客貢献の明確化

B2Bのビジネスで会社組織として、顧客からの信頼やロイヤルティを得ようというのであれば、多様な顧客接点とその担い手の活動が整理されていなければならない。その整理がない場合、例えば営業担当からの依頼を受けて、設計やサービスの部門が個別に対応することになる。これに対して、多くの企業では支援部門をいかにうまく使えるかは、営業担当者の技量という見方になっている場合が多い。

筆者が組織的な営業マネジメント等のコンサルテーションで用いるコンセプトの一つに、「顧客プロフィール検討」がある。組織的購買では特に、顧客組織の各機能の満足を高めて初めてロイヤルティを獲得できることからすると、顧客プロフィール検討は「どのような購買を行う特徴があるか」「何に重きを置いた選択をするのか」といった顧客の組織特性の相違を反映したものが必要になる。これに対して一般的に行われている顧客情報の記述は、営業担当者に依存した個別性が高く、また直近のビジネスに直結する情報に特化しがちであるように見受けられる。例えば従来の経験からは、以下のような内容が中心になることが多い。

(1)キーパーソン型のアプローチを好む

組織的な購買のため、購買プロセスごとで役割機能があるはずだが、特定の人(キーパーソン)に特化した営業情報を収集しようとする。その結果顧客組織の内情全体が見えていないことが多い。

(2)キーパーソンの周辺情報への偏り

コミュニケーションのためには、趣味嗜好の情報があってもよいが、それは話のきっかけでしかないはずである。本来は購買(=顧客の問題解決)のために必要となる、顧客組織について共有すべき特性や購買の仕方についての情報が求められる。

(3)直近の見込み案件情報への傾注

営業が案件情報に傾注するのはやむ無しの面があるとはいえ、顧客自身が顕在化させた案件の情報ないし自社のリプレース情報だけが案件情報とされている場合も多い。それは顧客内での競合を見ていないということであるし、そのリストの中での優先度が金額の大きさという場合、顧客の納得感や信頼を得られるとは限らないであろう。

いずれも特定個人をいかに口説き、既知の案件をいかに受注するかということに焦点が当てられている。このような顧客分析では、支援部門を有効に機能させることは難しいと思われる。顧客プロフィールをきちんと検討することは、営業のみならず、サービスや他の支援部門を含めた顧客貢献を可能にするものである。

購買プロセスにおける顧客貢献

ここで、営業プロセスを題材に、支援部門を巻き込んだ顧客貢献について触れておこう(図表2)。

図表2:生産財における購買プロセス(例)
出所:西村(IMSC)& 四條 “B2B の営業マネジメント”をもとに筆者作成

筆者の営業マネジメントにおける購買プロセスの考えを援用してみると、以前触れたように、営業プロセスとは顧客の購買プロセスを支援促進することに尽きる(※1)。サプライヤの企業では、営業を中心として、プロセスに応じて顧客が必要とする検討材料を提供し、意思決定を支援することを行うことになる。この支援について営業担当個人がすべて担うことは困難であることから、支援組織を含めた組織としての営業が必要ということになる。

※1:筆者の経験では、これまで伺った企業の多くで、類似的な営業プロセスを持っていると言われてきた。 しかしほとんどが購買の促進に寄与するのではなく、営業を進めることを軸に設定されている。ここでは、営業 プロセスに際して筆者が標準的に設定している7段階のモデルを用いている。

ここに至って、間接・支援部門も顧客支援を行っていることを明確にすることができる。かつてある機器メーカーのコンサルティングにおいて、地域ごとに設置されていたショールームの機能を進化させていった経験がある。顧客がショールームを訪問した際に、実物を見るだけではなく、機器を設置する設計デザインを行う機能を持たせたのである。顧客に営業が同行していても、必要なアドバイスは専門家から得ることができ、さらに設計デザインのパターンに応じて投資額も見積もれるため、顧客は有意義な情報を受け取ることができた。これは顧客の購買意思決定に寄与すると同時に、顧客が同社と契約を行いたいとの意思も進むことから、双方にメリットがある取り組みとなったのである。

組織統合とマネジメント

どのように組織全体を顧客志向に向けていき、顧客ロイヤルティへと進化させていくかについては、唯一の解はないと思っている。ただし、自社の固有性を踏まえたマネジメントの取り組み方が鍵となることは間違いない。組織が連携し、顧客志向の行動へと進んでいくためには、まずは評価も含めたルールの設定が必要であり、その後はその志向を定着化させ、シェアードバリューにその志向を体化できるかということになろう。

例えば顧客満足度を調査しスコア把握を行うようになると、企業としてはCSスコアをKPI(Key Performance Indicator)として用いるということを考える。確かにCS活動を定着させる意識づけのために、スコア向上の行動を取るように組織をドライブするために、KPIは有効であろう。ある企業では、CS志向が社内に定着したとの判断でCSスコアを評価のKPIから外すまで、10年間かかったと言っている。その点で立ち上げ期を中心に、定着化のためにKPI化することはやむを得ないことかもしれないが、CSスコアを用いる際に留意すべき点が3つある。

第一に、CSスコアによって受け止めた問題点は、個別の顧客にお返しすべきものと捉えることである。個別顧客からの評価は、絶対値として他社と上下を比較するものではなく、項目間の評価に応じて、顧客への取り組みの良否を反省し、新たな活動に資するものである。一方で、一定数の顧客をもとにCSスコアを経年の傾向等から評価・比較することにも意味がある。それらから特定部門の顧客対応の課題を抽出することも可能であろうし、努力した点と顧客反応を比較することを通じて、正しくPDCAを回すことも可能であろう(※2)。CSスコアが出されると、あたかも担当している営業担当・組織に対して、顧客から評価をもらったかのように感じて、経営サイドは個人や組織の評価として使いたくなるようである。しかしスコアをつける各人の基準を厳密にはコントロールできない以上、スコアは顧客からの会社組織への評価として謙虚に受け止めるものであり、それを個別の担当者間の比較に用いることは妥当ではない(※3)

※2:筆者を始めとする顧客満足に関する当社のチームでは、これらの一連のアセスメントを可能にする仕組みを作成して、PDCAが単なる管理サイクルではなく、マネジメント活動になるようにしている。
※3:いわゆる序数と基数を混同してしまうことと同様の問題を生じると考えている。

第二としては、スコア向上を簡単に管理しようとする結果、個別顧客単位に割り戻して目標スコアを定めて向上すべし、という取り組みにおとしてしまうことが多い。本来はCSの定着のために部門単位でスコアの向上を目標にした場合、自組織における傾向を把握し、(ちょうどポートフォリオを組むように)組織単位で顧客環境や反応に応じたスコアのミックスの結果を押し上げるようにするのであれば、有効性が見込めるであろう。

さらにスコアが経年で出されるようになると、それらは常時向上し続けるべきであるとの誤解も生じがちである。顧客満足に限りはないとは言われるが、それはスコアの限りない上昇を指すものではなく、図表1に示したような踊り場もあるし、新たな(異なる)評価に進化していく時点を迎えるようにしていく必要もあると考えている。

顧客ロイヤルティを目指して

顧客ロイヤルティを目指して組織とマネジメントを編制していくことは、顧客との長期的な関係性を構築していくことがベースになる。時として、顧客の満足は大事であろうが、顧客のロイヤルティを得るとは何かわからないとの質問をいただくことがある。ある経営者の方は、理由が明確でなくとも足が向く店は居心地がよいと引き合いに出されている。顧客ロイヤルティとは、応援したい、一緒に取り組みたいというファンが作られることではないかと言われていた。その言はまさに象徴的である。そこにはファンになってもらう専用の活動があるのではなく、実際的な顧客対応の諸々の活動や何かが心に響くという側面があり、一過性ではない顧客利益を考えた行動ができているかということが問われていることになるのである。

【第1回】 顧客満足度の再考
【第2回】 顧客接点における対応
【第3回】 組織とマネジメントの編制について