おわりに
北欧フィンランドでは、若年は資源であるという価値観のもとに、若者主体の活動を国家レベルでも地方自治レベルでも支援しています。
フィンランドでは、1999年に政府の省や庁などの枠を超えて、関連機関や組織が集まり、青少年政策に対する主目標を定めているのです。その内容は、「自立」「影響」「資源」の3つであり、若者に早く自立を促し、政治や社会活動への参加を促し、若者の想像力や指向を資源として社会の中で役に立てようとしているのです。
フィンランドは、若者は資源であるという考え方を持っており、若者の知識、経験、価値、見解、想像力を資源として伸ばすことに力を注いでいます。フィンランドでは、2004年から地方自治体が中心となって、若者がなんでも相談できるコミュニケーションポイントを設けています。そこには、政府機関、地域企業、学校などの組織や機関が一同に集積しています。
日本の若年自立挑戦プランにおいて、ジョブカフェが設置されている自治体は現在25カ所。時限施策であるジョブカフェは、今後自治体の予算で運営することが求められています。
フィンランドにおける若年支援は、国家レベルの取り組みであり、多くの予算がついていることに目がいきがちです。しかし、自治体における草の根のコミュニティを上手く連携させて、若年を支援する動きと中小企業への人材供給への動きを同時に行なうことにより、低予算でも若年支援を行なっていくことができるはずです。
日本においてはようやく始まった若年就業支援ですが、この動きを一過性のものとせず、若年は財産であり地域経済を活性化させる原動力になる資源である、との考え方をみんなが持って、活性化のための取り組みを行なっていくことが必要だと言えるでしょう。
(参考.英国コネクションズの取り組み)
英国においては、13歳から19歳までのすべての若年に対する、包括的な就業支援対策であるコネクションズが2001年から行われています。コネクションズは、イングランドで展開されている就業支援サービスであり、2001年12ヵ所の拠点でサービスを開始し、2005年で45ヵ所の地域で展開が行われています。
図15:英国コネクションズに関わる組織
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出典:DfES Connexions Service Advise and guidance for all young people HC484 |
コネクションズの特徴は、若年に対してパーソナルアドバイザー(PA)と呼ばれる個別アドバイザーがつき、就業、生活、住宅、進学、福祉手続きなどの包括的なサービスを提供するものです。また、包括的なサービスを提供する上で、地域単位で人材会社や教育福祉サービス、ソーシャルサービス、ユースサービスなどの複数組織が連携してサービスを提供する点にあります。(図15) なお、PAの数は、2005年時点で約9,000人を数えています。
コネクションズの実行にあたっては、若年支援において教育と労働政策が分かれて行われている事の弊害の反省点から、日本での文部省と労働省が統合した教育技能省が設立されており、教育技能省がコネクションズに関して支出している予算額は、2005年で505億ポンド(約1,010億)にものぼります。
その上で、45の自治体には地域における若年人口などを考慮した予算配布が行われおり、1地域あたり平均として、年間3億円から6億円が配賦されています。
コネクションズは、学校段階からすべての若年をサービスの対象としており、公立学校に入校する生徒全員をデータベースに登録し、サービスの必要度を3段階に分けてその程度に応じたフォローを実施しています。最も支援が必要とされる若者には、30人の若者にPAが1人。やや問題を抱えている若者には250〜300人、リスクの低い若者には800〜1000人の若者に対してPAがつくといった割合でサービスを提供しているのです。
図16:若者とコネクションズサービス
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出典:NTTデータ経営研究所 |
コネクションズは、学校にいる若年に対してはエデュケーショナルPA、16歳以降の若年に対しては、センター勤務のユニバーサルPAがサービスを提供しています。また、学習が困難な学生やニートには、ターゲットPAと呼ばれる専門のPAが支援を行っています。(図16)
コネクションズは予算規模の大きさや国家的な取り組みに、目がいきがちですが、優れた点は,コネクションズの基盤となる若年を社会的に孤立に陥れないような社会的サービスを、英国はコネクションズ開始以前から提供していたことにあります。
ボーイスカウトや日本では耳慣れないユースサービスは、ビクトリア王朝時代の1900年前後にその原型が既に出来上がっており、民間における事業の必要性を感じた自発的な動きが発祥で、のちに行政側がその動きに加わるものになっているのです。
ユースサービスはボーイスカウトと同様の若年対象の課外活動組織であり、13歳から19歳の若者が参加の対象となり、「仲間づくり」「教育訓練」「挑戦」を目的とした活動を行なっています。
そして、ドロップイン・タイプあるいはコーヒーバー・タイプのユースワークや、ユースワーカーが自ら街角に出かけていって若者に働きかけをする「デタチト・ワーク(detached work)」、そして青少年に対する情報提供やカウンセリング・サービスなど、コネクションズサービスの原型ともいえる事業が1970年頃から展開されているのです。
ユースサービス施策は州や市町村の手に委ねられ、さらに各ユースセンターの管理者であるユースリーダーにも多大な権限が与えられています。さしずめ全国レベルの若年主体の若年のためのNPOとでも言えるでしょう。
英国においては、街作りにおいても特定の地域に教会やパブを必ず設置することを定めるなど、コミュニティの形成に配慮しています。マズローの欲求五段階説で言うところの「所属」の場を様々に用意することで、社会的な排除をなくし、自己実現の場を設けてようとしているのです。加えて、ビジネスリンク(日本での商工会議所)と若者達のコミュニティや共同活動も盛んです。大人は仕事に携わるだけではなく、地域・若者と接点のなかで、自分の活躍の場を見いだすこともユースサービスでできるようになっていたのです。
コネクションズは、こうした地域を活動拠点とする草の根的なコミュニティを連携させるマルチエージェンシー組織を政策により実現したものなのです。
また、英国コネクションズにおいては、CCIS(追跡データベース)と呼ばれる情報システムを活用し、学校段階から卒業した若者すべてを対象として包括的な支援を実施する仕組みを実現しています。
コネクションズにおいては、13歳で公立学校に入学する生徒全員を対象として、データベースに登録することを義務づけています。その際、年齢や居住地などの個人プロファイルに加え、パーソナルアドバイザーが学生と面談し、支援の必要度レベルを3段階に見立ててその情報を登録し、登録されている情報を元に担当となる生徒へのアプローチやサービスを行ない、対応履歴を登録しているのです。
フリーターやニートなど、既に学校を卒業した若年も含めた就業支援を行なっていく上では、学校段階からの情報登録とその記録を保持することにより定期的に若年をサポートするための仕組みの確立が必要です。また、サービスを提供する担当者や組織もその状況に応じて相応しいところが行なうべきであり、その際、過去の情報を参照した上で対応する方が質の高いサービスを提供できます。CCISは組織連携による一元的なサービスの提供と、13歳から19歳までの継続的でタイムリーな組織からの支援を行なう上で欠かすことのできないインフラとなっているのです。