はじめに
日本経済は景気低迷の長いトンネルを抜け、回復基調にある。こうした中で、都市部を中心とした大企業は採用枠を拡大し、人材獲得にしのぎを削る一方で、中小企業の雇用充足度はますます低下する傾向にある。こうした中で、中小企業は今後も人を採ることができないのか。若者は大企業志向で中小企業には見向きもしないのか。
その答えは、Noだといえます。中小企業は、採用される側の視点でものを見ることができておらず、若者は中小企業という言葉より先の、実際の働く現場のことがまるで理解できないために、敬遠をしているだけなのです。そして、大都市にでて働くより地元、親元から近くの所で自分らしく働くことを希望している。両者は互いにすれ違っているだけなのです。
地域経済の振興においては、地元経済に根ざした活動を行っている中小企業と、若年とのミスマッチの構造を把握するとともに、企業の未来を担う若者と企業とを結びつけていくための試みが必要なのです。
若年と中小企業の状況
2005年時点で全国における若年の失業率は、8.5%となっています。これは、全年齢平均の失業率4.4%の約倍の値であり、景気回復期にあって失業率が低下傾向となっている中においても、若年雇用は依然として厳しいものであるといえるでしょう。
図1:都道府県別若年失業業率(男女計 15-24歳)
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出典:総務省 2002年「就業構造基本調査」 |
また、若年の失業率には地域格差が存在しています。最も若年失業率の高い沖縄県が20%を超える状況であるのに対し、山梨県においては5%台であり、大きな開きが出ています。(図1)地域間格差が存在する理由としては、人口構成における若年比率の高さ、三次産業の比率の高さ、中小・零細企業の割合の多さなどにより起きることが指摘されています。
失業率の地域格差は、地域間の労働移動により解消に向かうものです。特に、若年労働者ほど移動性向が高く、地域格差は発生しづらい事が知られています。ですが現在の若者は、従来に比べると地元志向が強くなっており、親元から生活圏を変えたがらない傾向があり、若年の移動性向が低下していることが、地域格差が解消されない理由として考えられています。
実際、新規高等学校卒業者の就職状況調査で、平成12年3月末現在の就職希望者27万1千人の内、県内就職を希望している者が22万4千人であり、83%に及んでいるのです。都市圏で就職を行なっていた若者が地域に留まる傾向にある状況は、地域の中小企業にとっては人材獲得の好機と捉えても良いでしょう。
なぜなら、中小企業においては深刻な人材不足の状況にあるだけでなく、労働者の高齢化と人材不足が顕著になっているからです。
図2:従業員規模別人材充足率
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出典:経済産業省 2004年「人材ニーズ調査」 |
平成16年度に経済産業省が行った人材ニーズ調査においては、全国の中途採用市場における人材ニーズの86%が50人以下の中小企業において発生している実態が明らかになっています。(図2) |
図3:企業規模別、雇用形態別若年者割合(%)
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出典:厚生労働省 1997年「若年者就業実態調査結果報告書」 |
図4:企業規模別、若年正社員の確保の状況(%)
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出典:厚生労働省 1997年「若年者就業実態調査結果報告書」 |
また、平成9年度に行われた若年者就業実態調査結果報告書においては、全労働者の中で若年者の占める割合は、中小企業が大企業より低く、企業規模が小さくなればなるほど低い傾向が明らかになっています。企業規模別の若年正社員確保の状況を企業規模別に見てみると、中小企業は大企業よりも、若年正社員を確保できている割合が低くなっています。(図3) 中小企業は、規模が小さくなるにつれて次の世代の担い手となる若年労働者を獲得できず、人員構成が高齢化しているといえるでしょう。(図4) |
地方経済の活性化においては、若者と中小企業のミスマッチを解消させていけば、中小企業の活性化と若年失業の問題の2つの課題を解決することができるでしょう。以降では、ミスマッチの要因を企業と若年の側面から検証します。