「国際資源循環」の現状及び潜在的な環境問題
原油や素材の価格高騰を受けて、「国際資源循環」が活発化している。中でも、急速な経済成長を続け、全世界に向けて製品を供給する「世界の工場」となっている中国では、「古紙」「鉄屑」「使用済みプラスチック」等廃棄物由来の循環資源に対するニーズが極めて高く、原料としての輸入が急増してきた。循環資源の原料利用は、「資源の有効活用」という観点から見ればメリットがある。たとえば、日本では廃棄物として焼却に廻される「使用済みプラスチック」が、中国でなら種類毎に手選別が行われた上で、もう一度プラスチック原料として活用されるという事実もある。一方で循環資源は、「潜在汚染性」というリスクも抱えている。技術的な裏付けのある適正な処理やリサイクルが行われなければ、環境汚染の原因ともなるし、原料として使えない異物等の不法投棄の温床ともなりうる。さらには、悪意ある事業者等による汚染性を有する廃棄物の輸出事例等も既に発覚している。
「国際資源循環」における「負のサイクル」
図1:循環資源の越境的取引における
「負のサイクル」
出典:NTTデータ経営研究所にて作成 |
こうした中、中国を含む東アジア諸国は、循環資源輸出入にかかわる環境関連規制を強化している。たとえば、中国向け輸出事業者に対する「登録制度の新設」や、国内法規制による「厳格な品質基準の設定」等は、わが国の事業者にとってもビジネスを円滑に推進する上では過剰とも言える負担となっている。しかしながら、運用段階でのチェック体制が必ずしも整備されていないことから、結果的に遵法意識の低い輸出事業者にとっての追い風となり、むしろ優良な輸出事業者のビジネスへの参入機会が阻害されるという、「悪貨が良貨を駆逐する」状況が見られている。図1は、「国際資源循環」における現状における「負のサイクル」を示しているが、この悪循環を断ち切ることができなければ、今後はさらに規制が形骸化し、環境問題についての潜在的なリスクが拡大してゆく恐れがある。 |
「国際資源循環」適正化に向けた
「資源循環ネットワーク検討委員会」による「新たな仕組み」作り
NTTデータ経営研究所が事務局を務める「資源循環ネットワーク検討委員会」(以下、「委員会」)は、「環境先進都市」として知られる北九州市をフィールドに、前述の「負のサイクル」を断ち切り、適正な「国際資源循環」を実現するための「新たな仕組み」に関する検討を進めている。委員会では、産官学の連携の下に調査研究を行い、平成17年度には「国際資源循環トレーサビリティガイドライン 〜安全・安心な北九州方式〜」(以下、「ガイドライン」)をとりまとめた。ガイドラインに整理した「新たな仕組み」は、循環資源の「トレーサビリティ管理を前提とした認証システム」の活用を前提としている。また、優良事業者から成るリサイクルチェーンを通じて、すべての事業者が万全な「環境管理」及び「情報管理」の体制を構築することを求めている。具体的な手法としては、輸出国と輸入国双方の自治体の関与の下に、循環資源の品質管理に対する知見を有する「第三者認証機関」が、「情報システム」を活用したモニタリングを行うことで、越境的な循環の「信頼性」と「透明性」を担保するという仕掛けを想定している。なお、平成18年度には、北九州市とその友好都市である中国天津市からの全面的なバックアップを得て、使用済みプラスチックの越境循環処理をテーマとした実証事業の実施を計画中である。
「二国間地域連携モデル」の構築に向けて
図2:「国際資源循環トレーサビリティ」を確保した
二国間地域連携モデルのイメージ
拡大
出典:資源循環ネットワーク検討委員会資料 |
委員会が実現を目指している「二国間地域連携モデル」のイメージを図2に示す。
「二国間地域連携モデル」とは、越境取引の主体が実際に活動する「地域単位」で両国の信頼関係を構築し、循環資源の移動状況等についてリアルタイムでの情報共有を図ることで、「安全・安心」な国際資源循環を実現する、というモデルである。
今後のシナリオとして、実証事業を通じてこのモデルの妥当性の検証・改善を行い、循環資源の排出事業者等が「環境汚染」や「不法投棄」のリスクを感じることなく、参加可能な国際資源循環の仕組みを事業化することを目指している。さらには、「資源循環型社会」の構築に向けたわが国の先進事例として、国内外の他地域に横展開していくことも視野に入れている。
モデルの実現のためには、すべての関係者による役割分担及びお互いの連携の強化がカギとなる。モデルの運用を行う上での主体は民間事業者であり、自らが排出する循環資源のトレーサビリティ管理等の取り組みは、自律的な「EPR」(Extended Producer's Responsibility/拡大生産者責任)ともいえる積極的な環境対策と評価されよう。地方政府は、そのサポートを行う上での地域社会における「コーディネーター役」であり、取り引き先の地域との連携を実現していく上での窓口でもある。国に対しては、こうした前向きな取り組みの妥当性や有効性を正当に評価した上で、他地域に対する範をなしていく上でのオーソライズや、その普及拡大につながる民間事業者へのインセンティブ供与といった役割が求められるであろう。NTTデータ経営研究所は、モデルの実現を目指す委員会の事務局という立場で、微力ながらその一旦を担っていけるよう今後も努力をしていく所存である。