IFRS がIT に及ぼす影響
財務諸表の表示−費用分類

シニアスペシャリスト 広川 敬祐

IFRSに対応する財務諸表の表示方法については、古くからIAS第1号「財務諸表の表示」で規定されています。現在、改訂IAS1号(2009年より適用)が最新版となっていますが、さらにIASBとFASBが共同で進めているMOU(Memorandum of Understanding覚書)の「財務諸表の表示プロジェクト」で財務諸表の表示の見直しが検討されています。

その検討論点は、「財務諸表の表示に関する予備的見解」(2008年10月に公表されたディスカッションペーパー、以下「DPと称します」)で新しい様式が提案されています。

  • 費用の分類方法を性質別と機能別の双方の分類開示を要求
  • キャッシュ・フロー計算書を直接法で作成
  • 財政状態計算書・包括利益計算書・キャッシュ・フロー計算書の表示区分の統一

ここでは、費用の分類方法について説明します。

費用の分類方法

これまでのIFRSでは、営業利益での費用の分類方法として性質別分類と機能別分類の2つの方法が示され開示方法はどちらでもよいとされていました。性質別分類とは、形態別、費目別分類とも言われ、材料費・労務費・経費など、いわゆる勘定科目別に表示する方法です。これに対して機能別分類は、製造費、販売費、管理費などによって開示することです。

日本基準では機能別分類によって損益計算書での費用分類を開示していることが多いように見受けられます。

営業利益の表示方法

新しいIFRSでは、この損益項目の分類方法として機能別分類に加えて、性質別(材料費、労務費、経費)の開示が求められています。さらには、測定基礎別の費用の内訳も要求されることになりそうです。

機能別に加えて性質別の費用分類の開示が要求されると、人件費や減価償却費など多くの機能を擁する費目については「機能別+性質別」の分類管理が必要になります。その対応として勘定科目コードを増やせばよいとの安易な方法もありますが、それでは勘定科目が機能別の種類だけ倍増することになりかねません。

勘定コードが増えてしまっている例

IFRSによる分類要求が増えてきたからそれに応じて勘定科目コードを増やすという方法は誤りだとは言いませんが、正しい方法なのかと疑問を持ってしまいます。

また、勘定科目コードについては、この機能別・性質別分類の他、予算管理目的での分類や部門別に分類しているケースも見受けられます。そうなれば、管理ニーズに応じて勘定科目コードが増えていくことになり、使い勝手を損ねてしまいます。さらに使い勝手だけでなく処理・運用の煩雑性にも影響を与えます。

「機能別+性質別」の分類要求については、多くの企業で共通費の取扱いが課題になるものと思われます。例えば、一つのビルに様々な部門(販売、管理、開発など)が入居している場合、減価償却費や電気・水道代を機能別に配賦処理を行う必要が生じてきます。この場合、会計システムによっては勘定科目をまたがる配賦処理については処理上の制約が生じてくる場合や過度な配賦処理にもなりかねません。

「機能別+性質別」の費用の分類要求に関して、「勘定科目コード」を増やすことで対応するだけでなく、「部門コード」などのように別のコード体系と合わせて管理していくことを策定していけばよいのではと考えています。勘定科目コードについては、グループ会社間で体系が異なっている場合や他システムとのインターフェイスのボトルネックになっているという課題を有している場合もあります。

IFRS適用のため、この際、勘定科目コード体系も見直してみてはいかがでしょうか? その作業には多くの困難を伴うものと推測しますが、5年後、10年後に「あの時見直しておいて良かったな・・」と周囲から評価されることと思います。