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応用脳科学アカデミーアドバンスコース「脳と感覚器官」第1回(廣瀬先生・河原先生・谷藤先生)

タイトル「VR2.0と情動技術」

講師紹介

廣瀬 通孝(ひろせ みちたか)先生

  • 廣瀬先生 写真
    【現職】
    • 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
    【ご経歴】
    • 昭和29年5月7日生まれ、神奈川県鎌倉市出身
    • 昭和57年3月東京大学大学院工学系研究科博士課程修了 工学博士
    • 同年    東京大学工学部講師、昭和58年東京大学工学部助教授
    • 平成11年東京大学大学院工学系研究科教授、東京大学先端科学技術研究センター教授
    • 平成18年東京大学大学院情報理工学系研究科教授
    • 平成30年東京大学連携研究機構バーチャルリアリティ教育研究センター機構長
    • 現在に至る。
  • 【研究概要】

    専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャル・リアリティ。

  • 【主な業績】
    • 主な著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)。総務省情報化月間推進会議議長表彰、東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、大川出版賞、など受賞。
    • 日本バーチャルリアリティ学会会長、日本機械学会フェロー、産業技術総合研究所研究コーディネータ、情報通信研究機構プログラムコーディネータ等を歴任。

講義概要

講義内容
VR(バーチャル・リアリティ)とは、実際には存在しない世界を人工的に合成し、疑似体験することを可能ならしめる技術である。この技術が登場してすでに4半世紀がたち、社会のいろいろな場所に根をおろしつつある。この技術は感覚研究と不可分な関係にあり、感覚の理解がこの技術の今後の進展の鍵となっている。というのは、人が外界で感じるのは感覚を通してであって、世界を合成することは感覚信号を合成することに他ならないからである。
初期のVR技術といえば、やみくもに感覚信号を模擬する装置を作る試みが多く、費用対効果の面からもあまり洗練されたものではなかった。もっと効果的な方法論はないのか、というのが最近のVR研究の1つの方向となっている。
感覚には錯覚という現象があり、これを上手に利用することによっておどろくほど単純な仕掛けで実際とは異なる感覚を生成できることが知られている。錯覚という現象も単一の感覚内で起こるもの、複数の感覚にわたるものなど色々あるが、昨今、注目を集め始めたのが、後者すなわち感覚間相互作用(クロスモーダリティ)である。
VR技術にクロスモーダル概念を取り込むことによって、ある感覚の合成が他の感覚刺激にも使えることになり、先述の費用対効果の問題に加えて、これまではさまざまな技術的理由により人工的には合成不可能だった感覚も人工的に惹起できるようになる。たとえば、味覚などはその良い例で、こうした感覚についても、ディスプレイ開発の可能性がひらけてきたのである。
言うまでもないことであるが、感覚の生成はその受容器における情報処理のみならず、中枢での情報処理が重要な役割を占めている。そこに脳が介在することによって、錯覚現象などもひきおこされるのである。感覚が生成されると、そこに意味が付与され、最終的には感情や感性などという、より高次な機能へとつながっていく。
本講演では、VR研究における感覚ディスプレイ研究に焦点をあてつつ、最近のクロスモーダル技術の現状について紹介し、さらに感情の惹起のような高次な心理過程をどうとりあうかなど、さらに将来的な研究課題についても触れてみたいと思っている。
日時
2018/10/2(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※ 廣瀬先生のご講義は、13:00~14:20です。
場所
エッサム神田1号館 301
(東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2)
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「注意の制御」

講師紹介

河原 純一郎(かわはら じゅんいちろう)先生

  • 河原先生 写真
    【現職】
    • 北海道大学大学院文学研究科心理システム科学講座 特任准教授
    【ご経歴】
    • 平成9広島大学院教育学研究科 博士課程後期修了 学位: 博士(心理学)
    • 平成9東京大学大学院人文社会系研究科博士研究員(日本学術振興会特別研究員)
    • 平成10ブリティッシュコロンビア大学心理学科視覚研究室博士研究員
    • 平成11広島大学教育学部助教授
    • 平成18産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 主任研究員
    • 平成24中京大学大学院心理学研究科 教授
    • 平成27北海道大学 大学院文学研究科 特任准教授(現在に至る)
    • 北海道大学脳科学研究教育センター 基幹教員(兼務、現在に至る)
    • 北海道大学社会科学実験研究センター 特任准教授(兼務、現在に至る)
  • 【研究概要】
    • 専門は認知心理学で、とくに認知行動に及ぼす注意の影響を調べています。注意は物体認識から記憶、適応的行動にまで関わる、重要な選択と抑制の機構です。一つの作業に集中しているときに、どのような事態に妨害を受けやすいか、いったん妨害を受けてから立ち直るまでの時間経過はどうなっているのか。また、妨害の受けやすさに個人差はあるか。ストレスなど、個人の心身状態と注意の関係はあるかなど、行動実験を主として、眼球運動や瞳孔、脳機能計測を取り混ぜながら、注意が関わる問題に取り組んでいます。
  • 【主なご業績】
    • Kihara, K., Kondo, H. M., Y., & Kawahara, J. (in press). Differential contributions of GABA concentration in frontal and parietal regions to individual differences in attentional blink. The Journal of Neuroscience.
    • Miyazaki, Y., & Kawahara, J. (2016). The Sanitary-Mask Effect on Perceived Facial Attractiveness. Japanese Psychological Research, 58, 261-272.
    • Ito, M., & Kawahara, J. (2016). Contingent attentional capture across multiple feature dimensions in a temporal search task. Acta Psychologica, 163, 107-113.
    • Inukai, T., Shimomura, T., & Kawahara, J. (2016). Attentional capture during attentional awakening. Attention, Perception and Psychophysics, 78, 159-167.
    • 河原純一郎・横澤一彦 (2015). 注意―選択と統合― 勁草書房. ISBN: 978-4326251087
    • 河原純一郎 (2013). 注意 新版心理学事典 藤永保(監修)・内田伸子・繁枡算男・杉山憲司(責任編集) 平凡社. ISBN: 978-4582106039

開催概要

講義内容
注意は適応的に行動し、身の回りのものごとを認識するために欠かせない機能ですが、多面性をもっており、いくつもの働きと特性があります。本講義では、まず注意の3つの主要な制御の仕方について解説します。「この位置に注目して、他は無視しよう」というように、注意は能動的・意図的に制御することもできますが、同時に目立つもの/事象にも自動的・非意図的に引っ張られてしまうこともあります。また、これらの他に、過去の経験などによっても無意識的に向けられてしまう注意もあります。こうした複数のタイプの注意制御には時間特性にも違いがあります。講義では、さまざまなタイプの注意制御が働く最適時間についても解説します。この他、瞬間ごとに向ける注意とは違って、長距離運転などのように、長時間同じ事をし続けるときに注意した状態を維持し続けなければならないこともあります。本講演ではこうした持続的注意の測定法や特性についても紹介する予定です。
日時
2018/10/2(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※ 河原先生のご講義は、14:30~15:50です。
場所
エッサム神田1号館 301
(東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2)
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「視覚によって物体像を認識する脳のメカニズム」

講師紹介

谷藤 学(たにふじ まなぶ)先生

  • 谷藤 学
    【現職】
    • 理化学研究所・脳神経科学研究センター・チームリーダー
  • 【ご経歴】
    • 1987年大阪大学基礎工学研究科単位取得退学
    • 1987年岡崎国立共同研究機構・生理学研究所・助手
    • 1992年福井大学・工学部・助教授
    • 1996年理化学研究所・国際フロンティア研究システム・チームリーダー
    • 1997年理化学研究所・脳科学総合研究センター・チームリーダー
    • 2007年早稲田大学・先進理工学研究科 客員教授
    • 2012年東京大学大学院 新領域創成科学研究科 連携教授
    • 2018年理化学研究所・脳神経科学研究センター・チームリーダー
  • 【研究概要】

    目で見たものを認識する脳の仕組みの研究をしています。そのためには神経の活動の詳細な時間・空間パターンを観測しなければなりません。また、神経活動を解析する様々なツールの開発も必要です。このような技術の開発も行っています。

  • 【主な業績】
    1. 1 Wang, G., Tanaka, K., and Tanifuji, M. (1996) Optical Imaging of functional organization in the monkey inferotemporal cortex. Science 272, 1665-1668
    2. 2 Tsunoda, K., Yamane, Y., Nishizaki, M., Tanifuji, M. (2001) Complex objects are represented in macaque inferotemporal cortex by the combination of feature columns. Nature Neurosci. 4, 832-838
    3. 3 Maheswari, R.U., Takaoka, H., Kadono, H., Homma, R., Tanifuji, M. (2003) Novel functional imaging technique from brain surface with optical coherence tomography enabling visualization of depth resolved functional structure in vivo. J. Neurosci. Methods. 124, 83-92
    4. 4 Tsunoda, K., Oguchi, Y., Hanazono, G. and Tanifuji, M. (2004) Mapping cone- and rod-induced retinal responsiveness in macaque retina by optical imaging. Invest. Ophthalmol.Vis. Sci. 45 (10):3820-3826
    5. 5 Yamane, Y., Tsunoda, K., Matsumoto, M., Phillips, A.N., Tanifuji, M. (2006) Representation of the spatial relationship among object parts by neurons in macaque inferotemporalcortex. J. Neurophysiol. 96, 3147-3156
    6. 6 Sato, T., Uchida, G., and Tanifuji, M. (2009) Cortical columnar organization is reconsidered in inferior temporal cortex. Cerebral Cortex 19: 1870-1888
    7. 7 Tanifuji, M., Sato, T., Uchida, G., Yamane, Y., and Tsunoda, K. (2009) How images of objects are represented in macaque inferotemporal cortex. In: Imaging the brain with optical methods. A. Roe (ed.) Springer-Verlag, NY. pp 93-117
    8. 8. Sato T, Uchida G, Lescroart M.D., Kitazono J, Okada M, and Tanifuji M (2013) Object representation in inferior temporal cortex is organized hierarchically in a mosaic-like structure. J Neurosci 33, 16642-16656
    9. 9. Obara, K., O’Hashi, K., Tanifuji, M. (2017) Mechanisms for shaping receptive field in monkey area TE. J. Neurophysiol., 118, 2448–2457
    10. 10. Nakamichi, Y., Kalatsky, V. A., Watanabe, H., Sato, T., Rajagopalan, U.M., Tanifuji, M. (2018) 3D topology of orientation columns in visual cortex revealed by functional optical coherence tomography. J. Neurophysiol., 119, 1562-1575
    11. 11. Owaki, T., Vidal-Naquet, M., Nam, Y., Uchida, G., Sato, T., Câteau, H., Ullman, S., Tanifuji, M. (2018) Searching for visual features that explain response variance of face neurons in inferior temporal cortex. Plos One, in press

開催概要

講義内容

 私たちの目に映る物体のイメージは、大きかったり、向きが違ったり、或は、顔の表情のように形状が違ったりして、必ずしも同じ物体がお互いに似ているわけではありません。例えば、太郎さんの正面顔は、同じ太郎さんの横顔より、正面顔の花子さんの方によっぽど似ている。それにも拘わらず、私たちには、太郎さんは太郎さんとすぐわかる。私たちはこのような優れた物体認識(不変的な物体認識)の能力を持っています。
 脳の中でそれを可能にするメカニズムは何か、その一つの説明として、「脳の中で、物体イメージが画素空間から不変的な物体像表現を可能にする特徴空間に写像される」という枠組みが考えられています(DiCarlo, Cox, 2007)。平たく言えば、「物体像の持つ“ある種の”図形特徴の組み合わせを使って物体像を表現すると、不変的な物体認識が可能になる」と考えるのです。実際、脳の高次領域では、物体像が複数の図形特徴の組み合わせによって表現されているという証拠も(例えば、Tsunoda, et al., 2001)、また、物体に対する応答を組み合わせると、位置や大きさ、向きに依らず物体像が同定できるという証拠もあります(Hung, et al, 2005; Dobois, et al., 2015)。しかし、これはあくまで枠組みで、不変的な物体の表現を可能にするその特徴は何かが分からない。それが分からないことには、問題が解決したとは言えません。
 さて、近年、AIが大変なブームになっています。AIを使うと、できそうもない様々なことが可能になるらしい。そのブームの引き金の一つが、実は不変的な物体認識を可能にするニューラルネットワーク(DCNN)です。DCNNを使うと上に述べた簡単ではない物体認識がうまくできるのです(Krizhevsky, et al., 2012)。しかし、何故うまくできるのか、言い換えれば、DCNNが検出している特徴が、よく分かっていないのです。脳における物体像の認識と同じ問題がここにも残されています。
 本講演では、物体像の認識の問題とは何か、上に述べた基本的な考え方の枠組みはどのような証拠から生まれたか、物体認識におけるDCNNと脳の相違を概説し、物体像の表現に必要な特徴を明らかにする取り組みを紹介します(Owaki, et al., in pess)。

文献
  • DiCarlo JJ, Cox DD (2007) TRENDS in Cognitive Sci 11:333-341.
  • Tsunoda K, Yamane Y, Nishizaki M, Tanifuji M (2001) Nature Neurosci 4: 832-838.
  • Hung CP, Kreiman G, Poggio T, DiCarlo JJ (2005) Science 310: 863-866
  • Dobois, J, Berker, AO, Tsao, DY (2015) J. Neurosci. 35: 2791-2802
  • Krizhevsky, A, Sutskever, I, Hinton, GE (2012) Advances in Neural Information Processing Systems 25, Curran Associates, Inc. pp.1097-1105
  • Owaki, T., Vidal-Naquet, M., Nam, Y., Uchida, G., Sato, T., Câteau, H., Ullman, S., Tanifuji, M. (2018) Plos One, in press
日時
2018/10/2(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※ 谷藤先生のご講義は、16:00~17:20です。
場所
エッサム神田1号館 301
(東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2)
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶お問い合わせフォームより、お問い合わせください。
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